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元芸人の構成作家が【R-1グランプリ2021】決勝の審査を分析

私、ことりはかつて吉本興業で4年少々芸人やっておりました。今もお笑いが好きというのは変わらず、いわゆる賞レースの決勝は毎回録画して自分なりに採点し、審査員の審査(得点)の分析を行っております。今回は「R-1グランプリ2021」決勝の審査を分析してみたいと思います。以下敬称略。
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R-1グランプリ2021決勝の審査方法

R-1グランプリ2021テレビでオンエアされる決勝の審査方法は、今年からガラっと変わり
  • 1stステージは7人の審査員が1人100点の持ち点で審査。合計700点満点。
  • 視聴者がTwitterの投票機能を使い、「爆笑!(+5点)」「面白い!(+3点)」「いいね!(+1点)」のいずれかに投票。3択のうち獲得票の割合が一番多かったものの得点が加算される。
  • 1stステージのネタ順は事前の抽選で決定。
  • 敗者復活戦によって、1名が決勝に勝ち上がる。
  • 1stステージ10人のネタ終了後、得点上位3組が「Finalステージ」に進出。
  • Finalステージは1stステージド3位→2位→1位の順に2本目のネタを披露し、審査員は1人100点の持ち点で審査。3組のうち最も点数が高かった芸人が優勝。

という方式です。

審査員は陣内智則、友近、ホリ、古坂大魔王、マヂカルラブリー野田クリスタル、麒麟 川島明、ハリウッドザコシショウの7名。審査員のメンバーも様変わりしております。

1stステージの審査結果を振り返る

陣内 友近 ホリ 古坂 野田 川島 ザコシ 視聴者 合計
マツモトクラブ ⑧89 ⑤93 ⑨93 ⑥94 ⑩88 ⑧89 ⑨88 3 ⑨637
ZAZY ②93 ②95 ③95 ①99 ①95 ①93 ①94 5 ①669
土屋 ⑨88 ①96 ⑥94 ④95 ④93 ⑥90 ⑥90 1 ⑦647
森本サイダー ⑤91 ⑦91 ①96 ③96 ⑤92 ⑥90 ②93 1 ⑤650
吉住 ⑥90 ②95 ⑥94 ⑥94 ⑧91 ⑧89 ⑨88 5 ⑧646
寺田寛明 ⑩87 ⑨89 ⑨93 ⑧93 ⑨89 ⑩88 ⑧89 5 ⑩633
かが屋 賀屋 ⑥90 ⑤93 ①96 ④95 ③94 ④92 ⑥90 5 ③655
kento fukaya ④92 ⑧90 ⑥94 ⑧93 ⑤92 ④92 ④92 5 ⑤650
高田ぽる子 ②93 ⑨89 ③95 ⑩92 ⑤92 ①93 ②93 5 ④652
ゆりあんレトリィバァ ①95 ④94 ③95 ②97 ①95 ①93 ④92 ②666

審査結果

  • 7人中が4人が「ZAZY」に最高点を付け、3人が「ゆりあんレトリィバァ」に最高点を、「土屋」「森本サイダー」「かが屋 賀谷」「高田ぽる子」にも1人ずつが最高点(ホリと野田クリスタルは2組同点、麒麟 川島は3組同点で最高点)を付けました。
  • そんな中4人から最高点、7人全員から93点以上の評価を得て「ZAZY」がトップでFinalステージ進出。
  • 3人から最高点、全員から92点以上の評価を得て「ゆりあんレトリィバァ」が2位でFinalステージ進出。
  • 最高点を付けたのはホリ1人だけでしたが、全員が90点以上を付けて視聴者投票でも5点を獲得した「かが屋 賀谷」が3位で最終決戦進出を決めました
  • 「高田ぽる子」は麒麟 川島が最高点を付け、2人が2位の点数を付けたものの、友近が9位で古坂大魔王が10位の点数を付け評価がはっきり分かれました。

審査の傾向

陣内 友近 ホリ 古坂 野田 川島 ザコシ
最高得点 95 96 96 99 95 93 94
最低得点 87 89 93 92 88 88 88
得点差(最高点-最低点) 8 7 3 7 7 5 6
  • 陣内は最高得点と最低得点の差が8点、一方ホリは3点で最高と最低の点数差が少ない。
  • Finalステージ進出に関しては、視聴者投票は影響を与えませんでした。
  • 審査員全員から評価が高かったのが「ZAZY」、低かったのが「寺田寛明」でした。

陣内智則の審査の特徴

  • 個人的に理想的な審査員は、“出演者にきちんと点数差をつける”“極力同じ点数を付けない”ことだと思っていて、そういう意味で審査員としてきっちり役割を果たしていると思いました。
  • 「高田ぽる子」の評価が高く、「かが屋 賀谷」の評価が低めだったのが特徴的。
  • 番組の構成上致し方無いのですが、もっと各芸人へのコメントを聞きたかったです。

友近の審査の特徴

  • 「土屋」「吉住」の評価が高く、「ゆりあんレトリィバァ」に4位の点を付け、「高田ぽる子」の点数が低いという、独自の採点でした。
  • 自分の感性に忠実に、周りに左右されず評価している印象。

ホリの審査の特徴

  • 最高点と最低点の点差が3点と差がないため特徴・好みがわかりづらかったです。
  • その中でも「森本サイダー」「かが屋 賀谷」が最高得点で、その基準と評価ポイントが知りたいところですが、コメントのタイミングがほぼ無く・・・。

古坂大魔王の審査の特徴

  • いきなり2人目の「ZAZY」に99点を付けたのは、それ以上の点数を付けられないという覚悟も含め、潔さを感じました。
  • トップバッター「マツモトクラブ」に94点を付け、それによって以降の点数が若干インフレ気味になったかもしれません。

マヂカルラブリー 野田クリスタルの審査の特徴

  • 最高点と最低点の点数差もありつつ、今年の審査全体の方向性に近い点数を付けていました。
  • 去年のR-1王者としての一番リアルで現役感のある意見を聞きたかったのですが、話を振られる機会が少なく・・・。

麒麟 川島明の審査の特徴

  • 「高田ぽる子」に10組中1位タイの点数を付け高評価。
  • 最高得点を3組に付けたのも特徴的。
  • 最高点と最低点の点差は5点と少なめでしたが、野田クリスタル同様今年の審査全体の方向性に近い点数を付けていました。

ハリウッドザコシショウの審査の特徴

  • 「高田ぼる子」に2位の点数を付け評価が高く、「吉住」に最下位の点数を付け評価が低かった。
  • 意外と(という言い方は失礼かもしれませんが)作品性、独創性よりもウケと笑いの量を重視した審査だなという印象です。

Finalステージの審査結果を振り返る

陣内 友近 ホリ 古坂 野田 川島 ザコシ 視聴者 合計
かが屋 賀谷 92 94 95 93 90 91 90 5 ③650
ゆりあんレトリィバァ 92 93 96 98 94 93 92 5 ①663
ZAZY 91 96 95 93 91 92 93 5 ②656
  • 1位:ゆりあんレトリィバァマヂカルラブリー663点
  • 2位:ZAZY656点
  • 3位:かが屋 賀谷650点
ゆりあんレトリィバァが優勝

Finalステージ審査結果に関して

  • 7人中5人が最高点を付けた「ゆりあんレトリィバァ」が優勝。
  • 結果的には、古坂大魔王が「ゆりあんレトリィバァ」と他の2人に5点差、マヂカルラブリー野田クリスタルが「ゆりあん」と「ZAZY」で3点差を付けたのが、「ゆりあん」優勝に導いた原因となりました。
  • 1stステージ同様、友近は独自の基準で審査をしている印象。
  • 視聴者投票の結果はFInalステージの結果には影響を及ぼしませんでした。

今大会に関して

ネット上で見られた意見

R-1グランプリ2021決勝終了後、ネットで多く言及されていたのが“番組としてグダグダだった”という点です。

  • 途中から時間が無くなり審査員の点数発表が一人ずつではなく、一斉に発表に。
  • ネタ後の審査員コメントも聞けて1人だけ。ネタ後の芸人との平場の絡みもほぼ無し。
  • ZAZYのネタのクリップ取り忘れ(本人のミス、スタッフのミス両方あると思いますが)。
  • ゆりあんの優勝コメントでボケた時の顔のアップを捉えてなかった。それ以外でも音響のミスなどスタッフサイドの責任と思われるミスが散見された。
  • 番組最後に謎の優勝者のネタのリピート(この部分が関東エリア、関西エリア以外の地区では流れないため、その調整だったみたいですが)

と、ネタ以外の部分でつっこまれてしまうポイントが多かったのが、残念でした。

個人的に良かったと思える点

個人的に今回の大会、そして番組で良かったと思うのは

  • 出演者を芸歴10年以内に制限することで、テレビでの露出があまり多くないないメンツが揃い、新鮮な印象を持ちました。
  • オープニングのVTRや、審査員と司会のメンツなどリニューアルして“新しいものを作る”ということへのこだわりを感じました。

グダグダな点があったものの、他の賞レース特にM-1グランプリのいいところを見習って”新しい大会を作ろう”という意志は感じました。今年の経験を糧にして、とにかく来年以降も大会を続けて欲しい(それがより良い形になるのが理想ですが)というのが個人的な思いです。

2021年審査に関して

昨年2020年のR-1決勝を見て一番疑問に思ったのは「審査員の意義とは?」でした。

点数評価では無かったため(持ち票の3票をどの芸人に投票するか審査員が決めるシステム)審査員の評価の基準がわかりづらく、芸人が何を基準にネタを作っていいのかわからないシステムだったので、「だったらいっその事、審査員なしの視聴者投票で決めてしまえば」と思っていました。結果、今回リニューアルされて審査方法が代わりました。

個人的見解

  • 7名の審査員がそれぞれ持ち点100点で投票するというシステムは、M-1と同じですがやはり偏らずに納得のいく結果に落ち着きやすいのかなと思いました。
  • 審査員のメンツの多少の入れ替えはあったとしても、この審査方法は継続してもよいのでは。
  • そうなるとやはり「視聴者投票」は、番組の進行上時間を食うしトラブルも起きがちなわりに、審査に影響を及ぼすものではなく、結果投票した人も満足するような形になってないので、無くしてしまった方がよいのでは。

来年以降の大会に関して

個人的提言

リニューアルされた「R-1グランプリ」、審査方法以外にも個人的”こういうのはいかがでしょうか?”という提言を書いておきます。
  • 放送時間2時間で敗者復活含め10名がネタをする(Finalステージと合計で13ネタ)というのは物理的に時間が足りない気がします。敗者復活含め8人での決勝が時間的にはベストではないでしょうか?
  • もし、放送時間が今よりも長くなって2時間半あるいは3時間になるのであれば、決勝のネタ時間を4分にして欲しいです。3分だと勢いで乗り切れる可能性がありますが、4分になるとより構成・展開・演技力が求められるようになるかと。
  • とは言え放送時間が2時間のままであれば、ネタ時間が3分となるのは致し方無いと思いますが・・・
  • もっと審査員の寸評、審査ポイントなどを聞きたいです。大会に臨む芸人も審査の基準を知りたいだろうし、視聴者としても審査員の“プロの視点と意見”は見所だと思います。
  • そして、やはり番組のエンディングは優勝者のネタのリピートではない形(Finalステージに残った優勝者以外のコメントとか、審査員のコメントとか)になんとか出来ないだろうか。

などなど思うところはありますが、とにもかくにも来年も無事大会が開催されること、そして同じく来年も芸歴10年以上のピン芸人を救済する大会「R-1ぐらんぷりクラシック」的な大会が開催されることを願って、この記事を締めたいと思います。

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