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元芸人の構成作家が【R-1グランプリ2022】決勝を勝手に採点

私、ことりはかつて吉本興業で4年少々芸人やっておりました。今もお笑いが好きというのは変わらず、いわゆる賞レースの決勝は毎回録画して自分なりに採点して順位をつけております。今回は「R-1グランプリ2022」を勝手に採点してみました。
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R-1グランプリ2022の採点をしてみた

「R-1グランプリ」は2021年から出場資格が芸歴10年以内に制限されるという大きな変更がありましたが、今年も更にいくつか変更点があります。
  • 決勝進出者が昨年の10人から8人に(復活ステージから1名進出するのは変わらず)。
  • 審査員が昨年の7人から5人に。審査員5人が1人100点の持ち点で審査。合計500点満点。
  • 視聴者投票のポイントがなくなりました。
  • Finalステージ進出者が3人から2人に。

項目に分けて勝手に採点

私は項目に分けて勝手に採点し、その合計点を芸人ごとに出してみました。R-1に関してはテレビ越しだと笑い声の大小がわかりづらいのと、ピン芸という芸の性質的にウケよりもむき出しになる“人”と“ネタ”で審査した方が良いかと思い、以下の基準で採点しました。

  • 合計100点満点で採点。
  • 【構成】:30点満点(R-1決勝に出てくる最低ラインを24点として採点)。
  • 【表現力・熱量】:30点満点(R-1決勝に出てくる最低ラインを24点として採点)。
  • 【オリジナリティー】:30点満点(R-1決勝に出てくる最低ラインを24点として採点)。
  • 【エクストラポイント】は10点満点で基準点は5、クスッとくるポイントがあれば加点、あとは出番順や個人的つぼなどで加点します。

1stステージ

①kento fukaya

構成 28
表現力・熱量 25
オリジナリティー 27
エクストラポイント 8
合計 88
「ゲームオーバー」で1ポイント、「テーブルでしたけど座椅子を使ってました」で1ポイント、オチの座椅子被せで1ポイント加算でエクストラポイントは8になりました。

寸評

  • フリップネタの発展系で絵を使いつつ、録音した音声やBGMも使ったりと色々工夫されており見てる人を飽きさせないネタ。中身もよく練られていました。
  • ただやはり、審査員からも指摘がありましたがちょっとその工夫に頼りすぎなイメージは否めません。絵なのか音声なのかはどちらかだけじゃないと、ピンでやってる意味合いとは?という根本的なところを感じてしまいます。
  • システムというか仕組みがメインになってしまって、kento fukaya自身やその感情・熱量があまり見えてこない印象。そのあたりが審査員の点数に繋がらなかったか。
審査員の点数
ザコシ 野田 小藪 バカリズム 陣内 合計
90 90 92 84 93 449

②お見送り芸人しんいち

構成 28
表現力・熱量 29
オリジナリティー 29
エクストラポイント 10
合計 96
歌ネタの曲自体の構成がしっかりしてるところに1ポイント、「ロボットコンテスト決勝で動かなかくなって焦ってるメガネ好き」で1ポイント、「1回もテレビ出たことない漫才師の長文の解散発表好き」から長文読み上げて「いいね15が好き」の流れで2ポイント、「俺たちはずーっとここで歌い続けるって言った次の年に解散したアクアタイムズ好き」で1ポイント加算でエクストラポイントは10になりました。

寸評

  • 1個1個のフレーズ・ボケに破壊力があって客ウケも上々でした。
  • 間奏っぽいところで漫才師の長文の解散発表の読み上げが入ってくる構成も見事。最後に視聴者にも毒を向けるオチまでよく出来てました。
  • ぼやき漫才とか時事ネタなどにツッコミを入れるネタは、これまでたくさんありましたが、このネタはあくまで“好き”と言っていて、観客側がその裏の毒の部分を勝手に補完する形になってるところが現代的。
  • もう1本はどういうネタになるのか、同じテイストなのか変えてくるのか見てみたくなりました。
審査員の点数
ザコシ 野田 小藪 バカリズム 陣内 合計
93 95 94 89 92 463

③Yes!アキト(復活ステージ1位)

構成 25
表現力・熱量 27
オリジナリティー 27
エクストラポイント 7
合計 86
「こざとへんも混ぜてくれよ」で1ポイント、「はたして十二単はトイレに間に合うのか」で1ポイント加算でエクストラポイントは7になりました。

寸評

  • ギャグで3分押し切る潔さはあるが、どうしても一つ一つが単発で展開や強弱が無く一本調子という印象は否めません。
  • 前の「お見送り芸人しんいち」に比べると観客の想像力に委ねる部分も多く、ウケという点でちょっと爆発力に欠けた。
  • 審査員からも指摘があったようにもうワンアイデア、何かワンシチュエーション設定があるのか、見せ方の工夫があるのか、何かしらが無いと3分を持たせるのは難しいかもしれません。
審査員の点数
ザコシ 野田 小藪 バカリズム 陣内 合計
90 90 92 87 88 447

④吉住

構成 28
表現力・熱量 29
オリジナリティー 29
エクストラポイント 9
合計 95
それまでの優しいキャラから豹変して、芸能人の不倫にブチギレるところに1ポイント、「私は結構(テレビ)見るんだよね。だから当事者なんだ」に1ポイント、「謝罪会見したかとか、謹慎期間どれくらいかとかメモして家でエクセルでまとめてる」〜それをYouYubeにアップ〜収益化出来てそのお金でアフリカの子供たちが教育受けてる」の流れに2ポイント加算でエクストラポイントは9になりました。

寸評

  • 構成と憑依するような演技力、そして後半から最後のオチへの流れはお見事で、さすが実力者という印象。
  • 題材的に共感しやすいのもあって、観客を置いてけぼりにすることなくしっかりウケてました。
  • 大会のレギュレーション上仕方ないのですが吉住には3分という時間が少し短い気がしました。ネタ時間が4分だったらもう一展開入れられたり、吉住の世界観をもっと生かしたコントが出来るんじゃないかと想像してしまいます。
審査員の点数
ザコシ 野田 小藪 バカリズム 陣内 合計
91 93 97 91 91 463

⑤サツマカワRPG

構成 27
表現力・熱量 27
オリジナリティー 28
エクストラポイント 8
合計 90
「大会近いもんな」の繰り返しがハマってくるところに1ポイント、「場所変わるだけだと思うぜ」に1ポイント、いいタイミングでの「好きです」に1ポイント加算でエクストラポイントは8になりました。

寸評

  • 「大会近いもんな」の繰り返しでじわじわと観客がハマっていく独特なネタ。持ち味であるギャグではなく、しっかり芝居で見せる1人コントだったことに驚きました。
  • ハマっていくのと同時に高まってきた期待感を、上回る展開なのか裏切りなのか大オチなのか、それがあるともっと高得点になっていたのでは。
  • 普段ギャグのイメージが強いサツマカワが、このようなネタにチャレンジして決勝に上がってきたことは素晴らしいと思います。
審査員の点数
ザコシ 野田 小藪 バカリズム 陣内 合計
91 96 94 88 90 459

⑥ZAZY

構成 27
表現力・熱量 28
オリジナリティー 29
エクストラポイント 9
合計 93
めくり(フリップ)ではなく映像になって手数が増えた工夫に1ポイント、“番場”連発からの“ギバ”に1ポイント、「完全感電なんでんかんでん」に1ポイント、「みすみすティラミス蒸すネスミス」に1ポイント、「鋭角六角鈍角六角」に1ポイント加算でエクスクストラポイントは9になりました。

寸評

  • キャラクターバレして、どんなネタをするかある程度認知されてるZAZYがそのままの路線で、より強度を増してきたのがお見事。
  • フリップではなく映像になってめくる間がなくなり、手数が増えてより淀みなくスムーズな構成になっていた。
  • 最後歌のところで少しグダって失速した印象。
  • 今回のネタは芸能人(の名前)にちなんだボケに少し頼りすぎな感じはしました。芸能人を使うと安易というか笑いを取りやすくなるのは確かなので。
審査員の点数
ザコシ 野田 小藪 バカリズム 陣内 合計
95 96 98 86 89 464

⑦寺田寛明

構成 27
表現力・熱量 26
オリジナリティー 26
エクストラポイント 7
合計 86
「人間は縦に回転しないに越したことはないだろ」に1ポイント、「裏に誰かの悲しみがあるはずだ」で拍手笑いが起きて1ポイント加算でエクストラポイントは7になりました。

寸評

  • 派手なZAZYの後なだけにシンプルなフリップネタはどうしても地味に見えてしまった。
  • 1個1個のネタが単発というか、振ってオトして次のネタの繰り返しで山場が無い印象。
  • 後半それまでと違う展開があるとかか、裏切るとかもっとバカバカしい何かがあるとか、ひと工夫が欲しいと思ってしまった。
  • ザコシショウの「大喜利力はあるけど、テレビを見てる人を意識する何かが入ってると」というのがすごく確信を付いたコメントだと思います。
審査員の点数
ザコシ 野田 小藪 バカリズム 陣内 合計
90 92 94 85 90 451

⑧金の国 渡部おにぎり

構成 29
表現力・熱量 29
オリジナリティー 28
エクストラポイント 9
合計 95

トンビに持ってかれてるという設定の妙に1ポイント、「ピーヒョロロロロロじゃねえよ」に1ポイント、「俺俺俺俺」で1ポイント、「虹」からのファンタージーなオチで1ポイント加算でエクスクストラポイントは9になりました。

寸評

  • 設定が秀逸で、ネタの展開もオチまで淀みなく丁寧に作られていて、小道具やBGMの使い方なども非常に洗練されている印象。
  • ど頭明転したらトンビが頭に乗っていて、その状況を説明セリフではなくちゃんと芝居と効果音でわからせるところなど、台本も演技力も見事で、あと声のトーンやキーも心地良い。
  • 惜しくも2位タイながらFinalステージ進出は果たせずでしたが、しっかり実力を見せつけました。「金の国」コンビでのキングオブコント含め将来が楽しみです。
審査員の点数
ザコシ 野田 小藪 バカリズム 陣内 合計
93 94 93 90 93 463

1stステージの結果

私の採点の上位3組は

  • 1位:お見送り芸人しんいち96点
  • 2位タイ:金の国 渡部おにぎり95点
  • 2位タイ:吉住95点

でした。審査員5人の合計得点は

  • 1位:ZAZY464点
  • 2位タイ:金の国 渡部おにぎり463点
  • 2位タイ:お見送り芸人しんいち463点
  • 2位タイ:吉住463点

なんと2位タイが3組という大接戦となり、2位タイの3人の中で決選投票を行うことになりました。その結果・・・

3人での決選投票
ザコシ 野田 小藪 バカリズム 陣内
お見送り芸人しんいち お見送り芸人しんいち 吉住 吉住 お見送り芸人しんいち

賞レース史上でもおそらく例のない三つ巴での決選投票の結果「お見送り芸人しんいち」が決勝進出を果たしました。Finalステージに進出したのは・・・

  • ZAZY
  • お見送り芸人しんいち

の2名で、私の予想とは少し違う(ZAZYの評価が私は低めでした)結果となりました。

Finalステージ

Finalステージは1stステージのネタ順が早かった方が先にネタ披露です。

①お見送り芸人しんいち

構成 27
表現力・熱量 29
オリジナリティー 28
エクストラポイント 8
合計 92
「SASUKEファーストステージで落ちる消防士」に1ポイント、「M-1グランプリ1回戦で滑りまくってる子供コンビ」〜その漫才再現の流れに1ポイント、「100万円配ってる時だけフォロワーが多い宇宙旅行の人」に1ポイント加算でエクストラポイントは8になりました。

寸評

  • 1stステージに続き、このネタも1個1個のフレーズが強くて客ウケも上々でした。
  • “好き”から“応援するよ“になりましたが、基本的には1stステージと同じ構成で、歌の構成もほぼ同じ。それでもフレーズの強さと歌の上手さで飽きずに聞いてられるのはお見事。
  • ただ出来れば曲調が変わるとか、間奏部分の使い方を変えるとか何かしらの変化は欲しいなとは思いました。
  • 1本目に比べて芸能人イジりがちょっと多いかなというのも気になりました。
  • とはいえ完成度は高く、よくウケてたと思います。

②ZAZY

構成 27
表現力・熱量 28
オリジナリティー 28
エクストラポイント 7
合計 90
「ビオレがつっこむな」で1ポイント、「藍みょん」で1ポイント加算でエクストラポイントは7になりました。

寸評

  • ZAZYのネタの独特なリズムも、何度か見てると違和感が無くなってしまって、むしろ心地よさを感じる部分も出てきて、個人的にはクスッときても爆笑には至らなかったです。
  • 1本目のネタの「ダレノガレ」とか2本目のネタの「多歯」とか、ZAZYのネタで何度か聞いたフレーズもあって、映像使って見せ方は変わったものの、どこか既視感がある印象を持ってしまった。
  • もちろんしっかりウケていて、その点ではお見送りしんいちと遜色ない仕上がりだったのは間違いありません。
  • 最後の自分の写真をめくっていくところは、自身のラストイヤー、最後のR-1でのネタに自分の集大成を持ってきたという自負や、ZAZY自身の歴史の積み重ねと意地・執念・プライドなど、いろんな思いを感じました。

Finalステージの結果

私の採点では

  • 1位:お見送り芸人しんいち92点
  • 2位:ZAZY90点

でした。Finalステージ審査の結果は

ザコシ 野田 小藪 バカリズム 陣内
お見送り芸人しんいち お見送り芸人しんいち ZAZY お見送り芸人しんいち ZAZY
 お見送り芸人しんいちが優勝、「R-1グランプリ2022」のチャンピオンとなりました。
ということで、R-1グランプリ2022の採点をしてみました。番組全体の事や審査に関してなどについて、次回書きたいと思います。
昨年2021年の各賞レースを採点した記事は以下になります。
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