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元芸人の構成作家が【キングオブコント2020】決勝の審査を分析

私、ことりはかつて吉本興業で4年少々芸人やっておりました。今もお笑いが好きというのは変わらず。いわゆる賞レースの決勝は毎回録画して自分なりに採点し、審査員の審査(得点)の分析を行っております。今回はキングオブコント2020決勝の審査(得点)を分析してみたいと思います。
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キングオブコント2020決勝の審査方法

キングオブコント2020テレビでオンエアされる決勝の審査方法は
  • 5人の審査員が1人100点の持ち点で審査
  • 「ファーストステージ」は各組それぞれネタ終了後、5人の審査員が1人100点(合計:500点)で採点。全組終了後、その得点上位3組が「ファイナルステージ」に進出。
  • 「ファイナルステージ」で2本目のネタを披露し、再び5人の審査員が1人100点(合計:500点)で採点。「ファーストステージ」の得点と「ファイナルステージ」の得点を合計し、合計点の最も高い組が優勝。

という方式です。

審査員は設楽統、日村勇紀、三村マサカズ、大竹一樹、松本人志の5名(以下敬称略)。2015年以降はこの5人で固定です。

ファーストステージの審査結果を振り返る

設楽 日村 三村 大竹 松本 合計
滝音 ⑦90 ⑥90 ⑤90 ⑨89 ⑨86 ⑧445
GAG ⑩88 ⑥90 ③91 ⑥91 ⑩85 ⑧445
ロングコートダディ ⑦90 ⑨88 ⑤90 ⑧90 ⑦88 ⑦446
空気階段 ②94 ②93 ⑦89 ③92 ⑥90 ③458
ジャルジャル ①95 ①97 ①96 ①94 ①95 ①477
ザ・ギース ③92 ③91 ③91 ⑥91 ④92 ④457
うるとらブギーズ ⑦90 ⑩87 ⑨87 ⑨89 ⑧87 ⑩440
ニッポンの社長 ③92 ③91 ⑩86 ③92 ③93 ⑤454
ニューヨーク ③92 ⑥90 ②92 ②93 ②94 ②461
ジャングルポケット ③92 ③91 ⑧88 ③92 ⑤91 ⑤454

審査結果

  • 審査員5人全員が10組中1位の点数(一番高い点数)を付けたを付けた「ジャルジャル」が文句無しのトップでファイナルステージ進出
  • 続いて審査員3人が2番目に高い点数を付けた「ニューヨーク」が2位に。
  • 3位は接戦でした。7番目の点数を付けた審査員もいましたが、2人がジャルジャルに次ぐ2番目に高い点数を付けた「空気階段」が、「ザ・ギース」を1点上回り3位でファイナルステージ進出を決めました

審査の傾向

設楽 日村 三村 大竹 松本
最高得点 95 97 96 94 95
最低得点 88 87 86 89 85
得点差(最高点-最低点) 7 10 10 5 10
  • 日村、三村、松本の3人は最高得点と最低得点の差が10点、設楽は7点、一方大竹は5点で最高と最低の点数差が少ない。
  • 設楽は4組に同じ92点、3組に同じ90点を付けた。
  • 松本は全組に異なる得点を、自身の得点1位95点から10位の85点まできっちり1点差ずつ差を付けた。
  • 審査員間で一番得点の差が付いたのは「ニッポンの社長」(最高92点、最低86点)。

設楽統の審査の特徴

  • 審査の傾向としてはファーストステージの審査員の合計点の順位と近い。
  • 各審査員がそれぞれの組に何位の点数を付けたかが、審査員の合計点の順位と大きく異なることはありませんでした。
  • 「ニッポンの社長」「ジャングルポケット」の点数がやや高め、「GAG」の点数がやや低めとなっています。

日村勇紀の審査の特徴

  • 設楽と傾向が似ていて、ファーストステージの審査員の合計点の順位と近い審査に。
  • 「ニッポンの社長」「ジャングルポケット」の点数がやや高目(そこも設楽と似ている)。
  • 「ニューヨーク」に関しては他の審査員が3位以上の評価の中、唯一6位という評価でした。

三村マサカズの審査の特徴

  • 「GAG」の評価が他の審査員より高く3位、「ニッポンの社長」の評価が他の審査員より低く10位、と他の審査員とは少し異なる傾向の審査結果。
  • 特に「ニッポンの社長」に関しては他の審査員が全員91点以上付けている中、1人86点を付けていました。この点数次第では(例えば90点以上になっていた場合は)ファーストステージ3位は入れ替わっていた可能性があります。

大竹一樹の審査の特徴

  • 設楽、日村と傾向が似ていて、ファーストステージの審査員の合計点の順位と近い結果に。
  • 「ジャングルポケット」の評価が他の審査員より高く3位とやや高め。
  • 先ほども触れたように、最高得点が94、最低得点が89とその差が少ないのが特徴。

松本人志の審査の特徴

  • 「ニッポンの社長」の評価が3位とやや高く「空気階段」の評価が6位と低めで、審査員全員の得点順位とそこが入れ替わってるのが特徴。
  • 10組全部にきっちり1点ずつ異なる点数を付けてるのは、意図的なのか偶然なのかは分かりませんが、審査の基準というか方向性をしっかり導く役割を果たしており、審査員としての凄みを感じます。

ファイナルステージの審査結果を振り返る

設楽 日村 三村 大竹 松本 1st ファイナル 合計
空気階段 ③92 ③93 ①90 ①95 ②93 ③458 ②463 ③921
ニューヨーク ①95 ①95 ①90 ③91 ③92 ②461 ②463 ②924
ジャルジャル ②93 ②94 ①90 ②92 ①95 ①477 ①464  ①941

審査結果

  • ファイナルはステージは審査員によって評価が分かれました。
  • 空気階段」に一番高い点数を付けた審査員が2人、「ニューヨーク」に一番高い点数を付けた審査員が3人。「ジャルジャル」に一番高い点数を付けた人が2人でした(三村マサカズは3組同点)。
  • ファイナルステージのみの点数はトップの「ジャルジャル」と、「空気階段」「ニューヨーク」の差が1点とほとんで差がつかず。ファーストステージでの順位そのままの結果に。
  • 合計得点1位「ジャルジャル」2位「ニューヨーク」3位「空気階段」となり、「ジャルジャル」が悲願の優勝を果たしました。

審査(審査員)に関して

SNSで見られた意見

キングオブコント2020の審査に関してSNSで言及されていたのが“審査員のメンツはこれでいいの”です。

  • 審査員の人数が2015年以降固定の5人であるが人数はこれでいいのか?。
  • 「バナナマン」「さまぁ〜ず」がコンビ両方審査員なのはどうなのか?
  • 審査員の入れ替えがあってもいいのでは?

といった意見が多く見られました。

「バナナマン」「さまぁ〜ず」のコンビでの審査の差

両コンビの審査結果を改めて分析すると

  • 「バナナマン」は2人の審査の傾向が似ている。2人の点数で一番差が付いたのがファーストステージの「うるとらブギーズ」の3点で、それ以外は全て2点差以内。
  • 設楽に関してSNS上で“コメントが的確”という意見が多く見られたが、審査の点数に関しては同じ点数を複数のコンビに付けるケースが多かった。ファーストステージで4組に同じ92点、3組に同じ90点を付けたが、審査としてどうなのか?
  • 「さまぁ〜ず」は2人の間の点数差が「ニッポンの社長」で6点、「ジャングルポケット」で4点の差があった。
  • 大竹は高く付けたコンビと低く付けたコンビの点数差が少なく、三村は点数差が大きく他の審査員とは若干異なる傾向の審査をしていた。

個人的な提言

誰が審査員をやっても、どんな審査方法になっても、もはや“審査員が視聴者に審査される”という風潮が変わることは基本的には無いと思われます。特に審査時のコメントを取り上げられて、そこを指摘されることが多いですが、冷静に点数を見てみると

  • 5人の審査に著しい差は感じられない。個人的には基本観客の受けがいいものは上位になっている。その上でコントとして単調じゃ無く、展開があるものが評価されているように思う。
  • 三村の「ニッポンの社長」への点数のように、1人が他の審査員より4〜5点低い点数を付けると、それによって順位が入れ替わる原因になる。
  • そのため審査員一人の負担というか責任が大きい。
  • それを意識してか、そうではないのかはわからないが、点数差があまり無い審査になりがち。
  • その中できっちり点数差を付けながら、冷静に審査をする松本人志は流石の一言。

審査員の負担を少し減らして、もっと大胆な審査を個々にしてもらうためにも個人的にはやはり

人数を増やす。例えば5人→7人

  • 基本的には高い点数と低い点数の差があり、同じ点数をあまり付けない審査員。しっかり点数差を付けて審査する人を増やして欲しい。
  • 7人にするなら、そのうちコンビ2組(=4人)という構成はバランスが悪いと感じます。やはりコンビのうちどちらかだけにする方がよいのでは。
  • できれば年齢的にももう少し上の年齢の人か、もう少し若い年齢の人を追加して審査員の幅を広げてほしい。

もちろん大会関係者各位、毎年知恵を絞っているのは重々承知しております。その上で、いち元ピン芸人として、いちお笑い好きとしてと、無責任な立場で勝手ながら書き綴ってみました。

 

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