キングオブコント2021の後、SNSで見られた意見
先日行われたキングオブコント2021に関してSNSで言及されていたのが“トップバッターは不利ではないか?”です。これはおそらく今年のトップ「蛙亭」の時の審査員の以下のコメント
- 飯塚「トップバッターじゃなければ、もっと多分高くつけてるんですけど。ちょっと押さえちゃいましたね。」
- 秋山「様子は見ました」
- 松本「もう少し高くてもいいかなと思うんですけど、あんまりトップバッターで高くつけすぎちゃうと上が詰まってくる可能性があるんで。」
というのを受けて、トップバッター不利説が出てきてるのだと推測されますが、果たして出番順(ネタ順)が成績に影響を与えるのか、審査方法がある程度の期間固まっている「キングオブコント」と「M-1グランプリ」で検証してみました。
キングオブコントの出番順と成績
審査方法
- 「ファーストステージ」は各組それぞれネタ終了後、5人の審査員が1人100点(合計:500点)で採点。全組終了後、その得点上位が「ファイナルステージ」に進出。
- 決勝は10組で行われ、敗者復活はなし。2015年〜2017年は上位5組が、2018年〜2021年は上位3組がファイナルステージに進出。
- 「ファイナルステージ」で2本目のネタを披露し、再び5人の審査員が1人100点(合計:500点)で採点。「ファーストステージ」の得点と「ファイナルステージ」の得点を合計し、合計点の最も高い組が優勝。
出番順と1stステージ成績の相関
現システムになった2015年以降の「キングオブコント」出番順とファーストラウンドの成績です。
上の表を見てもらうと、まだ言い切るにはにはサンプルが少ないとは思いますが
- トップバッターだけが特別不利という結果にはなりませんでした。
- 現段階で数字上有利なのは6番と8番。6番は一昨年まで5年連続ファイナルステージ進出を果たしている。
- 不利と言えそうなのは、トップ3に入ったことの無い2番やここ2年連続最下位の7番。
ということになります。
M-1グランプリの出番順と成績
審査方法
M-1グランプリテレビでオンエアされる決勝の審査は、一般審査員による点数が含まれていた2001年以外は、審査員の人数やメンツを変更しながら現在は下記方法となっています。
- 「ファーストラウンド」は7人の審査員(2015年は9人、2016年は5人)が1人100点の持ち点で審査。
- 昼間に行われた敗者復活戦によって、1組が決勝に勝ち上がる。
- ファーストラウンド10組のネタ終了後、得点上位3組が「最終決戦」に進出。
- 最終決戦はファーストラウンド3位→2位→1位の順に2本目のネタを披露し、審査員は3組のうち1組に投票。最も票数を集めた芸人が優勝となる。
出番順と1stラウンド成績の相関
続いて「M-1グランプリ」の出番順とファーストラウンドの成績です。決勝が9組で行われた2002年〜2016年と、10組で行われた2017年以降で表を分けています。
上の表を見てもらうと(※2021年の結果を反映)
- トップバッターだけが特別不利ということではないが、前半2組ないしは3組は明らかに不利か。
- 前半よりも中盤以降が有利と言えそう。ファーストラウンドのトップ通過は全てネタ順4番目以降。
- 特にラストの出番は6年連続最終決戦進出を果たすなど、好成績を残している。
ということになります。
成績に影響を及ぼす要因
もちろん審査員は純粋にネタのクオリティーをきちんと評価しているのは重々承知してますが、上記2つの表も踏まえて「キングオブコント」と「M-1グランプリ」それぞれの大会で成績に影響を及ぼしそうな要因というか傾向を私なりに考えてみました。
キングオブコントの場合
キングオブコントの場合に順位を左右する大きな要因として、“トップが不利”とか単純な順番による有利不利ではなく、その日の流れという意味での“どんなネタがどんな順番で披露されるかが左右するのではないか”と私は推測しています。2021年の大会の特徴として
- 前半いきなり「蛙亭」「ジェラードン」「男性ブランコ」とキャラクターが濃いコントが続いた。
- 前半で明確にボケ・ツッコミがあるコントが少なかった(明確なツッコミがあったのはジェラードンくらい)。
ただし、今大会ファイナルステージに進出した3組「空気階段」「ザ・マミィ」「男性ブランコ」は
- 設定やシチュエーション設定が秀逸で、それを存分に生かしたコント。
- そのシチュエーションにおいて一般的に想起するであろうことを、いかに裏切るかという点が3組とも巧みだった。
- 3組共前半でしっかりツカミで笑いと取り、全体的に笑いの量も多く拍手笑いも複数箇所起きてシンプルにウケていた。
M-1グランプリの場合
M-1グランプリの場合に順位を左右する大きな要因として、その時点で観客=スタジオ観覧のお客さんがどのくらい“温まってるか”という意味での“観客の状態が左右するのではないか”と私は推測しています。賞レースではない「寄席」、何組かの芸人がそれぞれのネタを披露する劇場でも見られる漫才ならではの特徴として、
- 本ネタに入る前にしばしば客席の様子を伺うような“客いじり”が行われ、まず客席を温めてネタを受け入れやすい状態に持っていく
- コンビによっては客層を踏まえてネタをその場で決めたり変えたりするほど、観客に合わせてネタをチューニングする。
というのが挙げられると思います。演者がセンターマイクを挟んで向き合って客席に目線を向け声を発するという元々の特性も含めて、漫才は客席に目線や声をむけなくてもよいコントよりも“観客の状態に左右されやすい”と言えるのではないかと思います。
コントの大会「キングオブコント」がどんなネタがどんな順番で披露されるかの流れが左右する傾向があるとするならば、「M-1グランプリ」は、それまでの組がウケてるかどうか=観客が温まってかどうかに影響されやすい、つまり“その組がネタをやりやすい環境が整ってるかどうかが左右する”傾向にあるのではないかと私は推測しています。
そして賞レースでは、ネタ時間に制限があることもあって寄席のように“客いじり”をせずにすぐに本ネタに入るため
- 観客の状況がまだ不安定で温まりきっていない前半が不利で中盤以降が有利ではないか?
- あえて本ネタの中で客いじりをする組はいますが、ウォーミングアップ的な客いじりをする時間的余裕がなく基本的には客いじりを行わないため、ネタを始める時点で自分たちのネタをやりやすい環境が整ってるかどうかが重要になってくるのでは?
例えば、敗者復活を勝ち上がった組がラスト出番で登場していた期間の2007年〜2010年と2015年〜2016年は、最後に決まった一組への期待感と敗者復活を勝ち上がった組へのある種の判官贔屓も相まって、相当に客席の後押しを受けてネタをやりやすい環境が整っていたことが、6年連続で最終決戦進出を果たすという結果に繋がってのではないかと推測しています。
ネタの中身に関して考察
最後に先日の「キングオブコント2021」の傾向を受けて、今年の年末の「M-1グランプリ2021」のネタの傾向について考察してみたいと思います。
キングオブコント2021の傾向
今大会の決勝10組のネタを見て、個人的に感じた「キングオブコント」の傾向を列挙します。
- ファイナルステージ進出3組に共通した、ドラマチックなストーリー性のあるコントが今後多くなっていきそうな予感。
- 2018年以降ネタ時間が5分になったこともあり、ワンアイデアで押し切るようなネタよりも展開があるコントの方が有利になりつつあるのでは。より脚本力が問われる大会になっていきそう。
- それに付随して音楽(BGMや効果音など)・照明・映像の重要性が増してくるのではないか。そうなってくると現状の赤白のセットが照明で染めづらいというのが懸案事項になってくるのですが・・・。
- いわゆる“おかしな人”“変な人”“ヤバそうな人”にストレートに「気持ちわるっ!」「なんか変な奴いる〜」系のストレートなツッコミをする組は減ってくるのではないか。
ただし、その傾向の逆をいく組が高得点を取ることもあるのが賞レースですので、5分をワンアイデア(+@?)で突き抜けるネタや、おいでやす小田ばりのストレートなツッコミがバシバシ入るネタが上位にくる可能性ももちろん否定できません。
M-1グランプリ2021の傾向を予想
既に予選1回戦が始まっているM-1ですが「キングオブコント」の結果を踏まえて、あくまで個人的にこんな傾向になるのではという予想(野球解説者の順位予想くらい当たらないものだと思ってください)をしてみます。→M-1を終えて追記
- キングオブコントからの流れで、多くの人が無意識に持ってる偏見、誰もがなんとなく貼っているレッテルをどう上手く剥がして、“正しい”と判断されていることをひっくり返す裏切りがみられるのではないかと期待。
- ツッコミの方向性として、一例を挙げるなら「そのままだと危険だから声を掛ける」のようにツッコまざるを得ない理由があるからツッコむ、あくまで自分の側としては真っ当だと思う主張としてツッコむ、といった“ツッコミの理由づけ”“ツッコミの説得力”ががカギになってくるのでは。
- 題材やテーマが例えば「宇宙船」とか「死語の世界」のような非日常でありながらも、ちゃんと想像できそうないい塩梅のものを考えて、その状況を生かした展開をしっかり作ってくるコンビや、(トリオかもしれませんが)が出てくるのではないか。
- 関係性や立場の違う2人の逆転や土壇場での共感、例えば「いじめっ子といじめられっ子」「先生と生徒」のような関係だった2人が、ひょんなことで出会って・・・
なと勝手ながら予想してみました。
→全部が予想通りではなかったですがある程度は想像した通りになったかなと思います。