M-1グランプリ2021敗者復活戦の採点をしてみた
M-1グランプリ2021敗者復活戦は
- 視聴者が 「面白かったと思う3組」を全ネタ終了後に投票。最多の票を集めた1組だけが決勝に復活。
- 投票は公式サイト(スマホ・タブレット・パソコン)、またはテレビのリモコンのdボタンから投票可能。
という方式で、準決勝で敗退した16組が参加して行われました。
項目に分けて勝手に採点
- 合計100点満点で採点。
- 【構成】:25点満点(決勝進出最低ラインを20点)。
- 【表現力・熱量】:25点満点(決勝進出最低ラインを20点)。
- 【オリジナリティー】:20点満点(決勝進出最低ラインを15点)。
- 【客受け】:20点満点(決勝進出最低ラインを15点)。
- 【エクストラポイント】:10点満点で基準点は5、クスッとくるポイントがあれば加点、あとは出番順や個人的つぼなどで加点します。
1.キュウ
内容:ルパン三世
構成 | 21/25 |
表現力・熱量 | 20/25 |
オリジナリティー | 16/20 |
客受け | 15/20 |
エクストラポイント | 6/10 |
合計 | 78/100 |
「山が小さい気がするな」で1ポイント、エクストラポイントは6になりました。
寸評
- 2年連続準決勝進出で敗者復活に回った「キュウ」。去年も同じようなことを思ったのですが、細かいところをつくネタで台本上は面白いが、舞台でやって観客を引きつけるにはもっとわかりやすい説明か、あるいはランジャタイのような突き抜ける馬力がないと難しいネタという印象です。
- トップバッターだから余計に感じたのかもしれませんが、客席に向けてやってる印象があまりない。ややもすると「2人がなんか好き勝手に喋ってるな」という風に見えてしまう。シンプルにもっとエネルギーを客席に向けないと伝わるものも伝わってこないかなと正直思いました。
- あと4分間の中で起伏がないというかメリハリがないというか、リズムやテンポやテンションの変化があまり無く単調に感じてしまった。
2.アインシュタイン
内容:お子さんに人気が出そうな物語を考えた
構成 | 21/25 |
表現力 | 21/25 |
オリジナリティー | 16/20 |
客受け | 16/20 |
エクストラポイント | 5/10 |
合計 | 79/100 |
個人的にハマる箇所がなく、エクストラポイントは5になりました。
寸評
-
上手いし漫才としてよく出来ているのだが、ボケの稲田のキャラが浸透したことによってインパクトが薄れて普通に見えてしまった。
-
ちょっとストレートなネタ過ぎて、予想を裏切る部分がなく想定の範囲内でネタが終わってしまった印象。定着した稲田のキャラや世間からの見られ方をフリにしたり、そこを逆手に取るような工夫も必要かなと思います。
3.ダイタク
内容:双子の弟の葬式に兄が出たら
構成 | 23/25 |
表現力 | 22/25 |
オリジナリティー | 16/20 |
客受け | 17/20 |
エクストラポイント | 7/10 |
合計 | 85/100 |
寸評
- 技術と安定感はさすがで双子という特徴も十二分に生かしたネタだったのですが、上手くてスムーズに流れるが故にひっかりが無いというか、面白いボケも流れてしまった印象です。
- もっとどっちかが感情を爆発させたり、少しネタの本線からはみ出すところや違和感を持たれるところを敢えて作るのも手かなと個人的には思いました。
- あと一歩の爆発力をどうすれば出せるのか、非常に難しいテーマですが期待したくなるコンビです。
4.見取り図
内容:左利きに不便な世の中
構成 | 22/25 |
表現力 | 23/25 |
オリジナリティー | 17/20 |
客受け | 17/20 |
エクストラポイント | 9/10 |
合計 | 88/100 |
寸評
-
決勝間違いなしと思われていた「見取り図」がまさかの準決勝敗退で敗者復活に回りました。流石に実力はありウケてましたが、キャラやこれまでのネタが浸透し過ぎていて高いハードルを越えられなかった印象。
-
彼らの中でいろんなパターンをやり尽くした結果だとは思いますが、なんとなく見たことある感じで、予想を裏切る展開・驚きがなかった。
5.ハライチ
内容:登場人物がピンチの時に悪魔が現れて、力の契約をする
構成 | 22/25 |
表現力 | 23/25 |
オリジナリティー | 17/20 |
客受け | 18/20 |
エクストラポイント | 9/10 |
合計 | 89/100 |
寸評
- タイムオーバーしたところが減点になるのかという議論はあると思いますが、ラストイヤーに掛ける想いを十二分に感じました。
- ネタに人がしっかり乗ってて、台本を感じさせないというか、一言一言がズシンとくるようなそんな4分間でした。
6.マユリカ
内容:女性と海までドライブ
構成 | 23/25 |
表現力 | 24/25 |
オリジナリティー | 17/20 |
客受け | 19/20 |
エクストラポイント | 9/10 |
合計 | 92/100 |
寸評
- わかりやすい設定でありながら、ありきたりな展開・ボケではなく、しっかり笑いを取っていた。
- タイムオーバーの警告音がなってから、目に見えて焦ってオチがしりつぼみになったのは、完全にオーバーしたのに開き直ってやり切った「ハライチ」に比べると経験値の少なさを感じてしまった。
- 技術もセンスもあるコンビなので、来年以降に期待・そして注目したい。
7.ヨネダ2000
内容:将来二人でYMCA寿司を開くんだ
構成 | 22/25 |
表現力 | 23/25 |
オリジナリティー | 19/20 |
客受け | 17/20 |
エクストラポイント | 9/10 |
合計 | 90/100 |
寸評
- THE Wでも強烈なインパクトを残した「ヨネダ2000」。設定がぶっ飛んでて、その上で一切掛け合わないのに、ちゃんとやりたい事や笑いどころがわかるところがお見事。
- 今年の決勝のランジャタイじゃないけど、もっと認知度を上げてみんなが「ヨネダ2000」の取説を知ってる状態でネタを披露できれば、もっとウケるんじゃないかと思わせるコンビ。
- 展開があり、途中でテンポ・リズムの変化もあり、4分の中で飽きさせずに観客を惹きつけることができる、時間配分の上手なコンビだと感じました。
8.ヘンダーソン
内容:街コン
構成 | 23/25 |
表現力 | 22/25 |
オリジナリティー | 18/20 |
客受け | 17/20 |
エクストラポイント | 8/10 |
合計 | 88/100 |
寸評
- オーソドックスな漫才と見せかけて、それをフリにして笑いを取るスタイルがばっちりハマってました。
- 欲を言えばオーソドックスな漫才部分のネタがもっとくられていて、そっちもウケてると笑いが倍増するのではないかと思いました。
- 途中からある程度パターンがわかってしまうので、それを更に裏切る何かが欲しいかも。
9.アルコ&ピース
内容:鳥になりたい
構成 | 22/25 |
表現力 | 24/25 |
オリジナリティー | 17/20 |
客受け | 16/20 |
エクストラポイント | 7/10 |
合計 | 86/100 |
寸評
- 漫才自体をフリにした一種の“メタ漫才”をアルコ&ピースならではの形で熱演。
- 「ハライチ」同様、演じる人とが15年分の想いがしっかり乗ったネタで、悔いなく2人がやり切ったのは見てとれました。
10.カベポスター
内容:ストリートミュージシャンのライブを見て売れそうな人たちを見つけた
構成 | 22/25 |
表現力 | 21/25 |
オリジナリティー | 16/20 |
客受け | 17/20 |
エクストラポイント | 7/10 |
合計 | 83/100 |
寸評
- ストリートミュージシャンの格好や歌詞をイジるのだが、観客の想像に委ねる比率が高さすぎて情報があまり頭に入ってこない。
- もっとミュージシャンぽいマイムをするとか実際歌うとかが無いと見てる人には伝わりづらいネタかなという印象。
- 4分の中で起伏がなく淡々と進んでいった感じがした。センスはあると思うので、どうメリハリ・抑揚をつけるのかが課題かなと思いました。
11.ニューヨーク
内容:芸能人の友達を作るシミュレーション
構成 | 22/25 |
表現力 | 23/25 |
オリジナリティー | 16/20 |
客受け | 17/20 |
エクストラポイント | 6/10 |
合計 | 85/100 |
寸評
- ボケの嶋佐がずっと稲垣吾郎になっていろんなシチュエーションを演じるネタだが、この稲垣吾郎がしっくりこないと最後までそこに乗っかれないというある意味リスキーなネタ。
- ニューヨーク2人の人(にん)とネタがガッツリ合ってるかというと、そうじゃないネタな気がした。稲垣吾郎を題材にしてる時点でイジれる幅が狭まってしまった。
- もっとニューヨークならではの悪意・皮肉を上手に、このご時世に合ったやり方で入れ込んだネタを見たいかなと思ってしまった。
12.男性ブランコ
内容:温泉旅館に行きたい
構成 | 24/25 |
表現力 | 24/25 |
オリジナリティー | 18/20 |
客受け | 19/20 |
エクストラポイント | 10/10 |
合計 | 95/100 |
寸評
- ネタの構成・卓越した演技力・ボケの強さなど、個人的にこれまででNo.1の評価です。
- キングオブコント準優勝の実力をまざまざと見せつけた印象。
- 個人的には決勝で男性ブランコのネタを審査員がどう評価するか見てみたかったです。
13.東京ホテイソン
内容:親父のボウリング
構成 | 21/25 |
表現力 | 23/25 |
オリジナリティー | 18/20 |
客受け | 18/20 |
エクストラポイント | 7/10 |
合計 | 87/100 |
寸評
- 去年2020年決勝に残った技術と安定感は感じました。
- ただ、ツッコミを成立させるためのボケになっていて、掛け合いにはなってるけど自然な2人の会話じゃないというか、ちょっと強引に感じてしまった。
- また、このネタで言うと「イチロー」が答えになるクイズを作れるという設定だが「イチロー」である意味を見出せなかったし、最後の「天丼マンだ」はちょっと意味不明だった。
14.金属バット
内容:特技「早口言葉」
構成 | 22/25 |
表現力 | 23/25 |
オリジナリティー | 19/20 |
客受け | 19/20 |
エクストラポイント | 9/10 |
合計 | 91/100 |
寸評
- 金属バットらしい毒を入れ込み、一個一個のボケの爆発力があり、それが観客にもちゃんと伝わっていたのが素晴らしかった。
- 最後オチに向かうところが尻すぼみで終わってしまった感じになったのがもったいなかった。
- 今回決勝進出ならなかったが、いつか決勝での審査員の評価が見てみたいコンビの一つ。
15.からし蓮根
内容:居酒屋の店員とお客さん
構成 | 23/25 |
表現力 | 23/25 |
オリジナリティー | 16/20 |
客受け | 17/20 |
エクストラポイント | 7/10 |
合計 | 86/100 |
寸評
- 上手いし漫才としてよく出来ているのだが、「アインシュタイン」同様ボケの伊織のインパクトが薄れて普通に見えてしまった。
- 居酒屋にそんな変な店員がいたら、客はもっと早く店から出ていくだろうと途中から思ってしまった。
- もっと切羽詰まった伊織と二人になる必然性があるシチュエーション、緊迫感がある逃げられないシチュエーションだと見え方が違ったかもしれません。
16.さや香
内容:居酒屋での不満
構成 | 21/25 |
表現力 | 23/25 |
オリジナリティー | 17/20 |
客受け | 16/20 |
エクストラポイント | 7/10 |
合計 | 84/100 |
寸評
- 2人のテンション・力技で持っていくネタで。出番的なことも含めそれなりにウケてはいましたが、不条理な空間に引き込まれるほどの独自のワールドという感じではなく、独りよがりさを感じてしまった。
- ボケの石井が言い出した事(か・ら・あ・げ)に、ツッコミの石井がすんなりと乗っかってしまうことが不自然に見えてしまった。
独断と偏見での採点結果
1位 | 95 | 男性ブランコ |
2位 | 92 | マユリカ |
3位 | 91 | 金属バット |
4位 | 90 | ヨネダ2000 |
5位 | 89 | ハライチ |
6位 | 88 | ヘンダーソン |
6位 | 88 | 見取り図 |
8位 | 87 | 東京ホテイソン |
9位 | 86 | アルコ&ピース |
9位 | 86 | からし蓮根 |
11位 | 85 | ダイタク |
11位 | 85 | ニューヨーク |
13位 | 84 | さや香 |
14位 | 83 | カベポスター |
15位 | 79 | アインシュタイン |
16位 | 78 | キュウ |
実際の視聴者投票の結果は
1位 | ハライチ |
2位 | 金属バット |
3位 | 男性ブランコ |
4位 | 見取り図 |
5位 | 東京ホテイソン |
6位 | マユリカ |
7位 | アインシュタイン |
8位 | ニューヨーク |
9位 | からし蓮根 |
10位 | ヨネダ2000 |
11位 | アルコ&ピース |
12位 | さや香 |
13位 | ヘンダーソン |
14位 | ダイタク |
15位 | カベポスター |
16位 | キュウ |
ハライチが敗者復活戦を勝ち抜き、決勝進出を決めました。
- 私の採点で6位タイになった「ヘンダーソン」が視聴者投票では13位。
- 私が15位にした「アインシュタイン」が視聴者投票で7位。
- 同じく私が11位タイにした2組「ダイタク」が視聴者投票で14位、「ニューヨーク」は8位と差がついた。
といったところ。「ハライチ」も会場でウケていたので納得ですが、個人的には「男性ブランコ」を決勝で見てみたかったです。
敗者復活戦を振り返って
準決勝でも同じことを感じましたが、今年の敗者復活戦は去年よりも格段にレベルが上がったように感じました。
私の採点で敗者復活戦勝ち上がりの基準は85点以上だと想定しているのですが、去年と今年を比較すると
- 2020年敗者復活、私の採点で85点以上は5組。
- 2021年敗者復活、私の採点で85点以上は12組。
もちろんお笑いの審査はどこまでいっても相対評価なところがあり、去年の85点と今年の85点が全く同じレベルではないのですが、決勝進出してもおかしくないと思わせるコンビが去年より多く、準決勝および敗者復活の戦いが去年よりも熾烈だったのは間違いないと思います。
準決勝までの審査で落とされる基準
- 単純にウケが弱い。笑いが起こる箇所が少ないか、大きな笑いが起きていない。
- ネタがひとりよがりで観客を置いてけぼりにしていたり、自分たちの世界に観客を巻き込めていない。
- ウケていてもありがちな設定や(“モテたい”や子供の設定で大人びた事を言う”など)ありきたりのボケが多いネタ。
- どこかで見た頃がある、こすられた・既視感のあるネタ。
- キャラクターで勝負しようとしているが、そのキャラが弱くて普通に見えてしまう。
- 一本調子でネタに展開・起伏・抑揚が無かったり、リズム・テンポに変化がない。
- 見てる人の想像を裏切ることが少ない、予想の範囲を超えてこないネタ。
- たとえ台本はしっかりしていても、演じる人がそこに乗ってないネタ。
- 似たようなキャラや似たような設定で、上位互換の組がいる。
- 毒舌や下ネタがストレート過ぎる。
といったところが、準決勝と敗者復活戦を見て、私なりに分析した落とされる基準です。
2022年大会の予想・展望
- 実力と実績は十分。今まで披露したネタを超えてくる新たなネタや、これまでやってきたことをフリにした新たな一面を見せられれば:「ニューヨーク」「見取り図」「東京ホテイソン」
- キャラクターも客ウケも十分。あとは他の組との比較とその時のネタの強度・出来次第:「ゆにばーす」「モグライダー」「金属バット」
- ひとりよがりにならずに、自分たちの世界の強度と表現力を更に上げてしっかり観客をその世界に巻き込めたら:「ランジャタイ」「ヨネダ2000」
- 発想やセンスは抜群。あとはしっかり人が乗ったネタで観客の心を掴めたら:「真空ジェシカ」「もも」
- コントではなく漫才である必然性を見せ方や演じ方できっちり表現し、かつそのネタが笑いを取ったら:「ロングコートダディ」「男性ブランコ」
- 設定や構成含めネタの強度とボケの精度を更に上げて、爆発力があるネタで大きな笑いと取ったら:「マユリカ」「ヘンダーソン」
- 今一度2人のキャラクターを分析し、その上でキャラを十二分に活かせる設定でボケの破壊力があり観客の想像を裏切るネタが出来たら:「アインシュタイン」「からし蓮根」「ダイタク」
もちろん準々決勝以下で敗退した組やまだ見ぬ新星の台頭含め、どんな大会になるかは全く分かりませんが、勝手に妄想しております。
ということで、M-1グランプリ2021敗者復活戦の採点をしてみました。