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私、ことりはかつて吉本興業で4年少々芸人やっておりました。今もお笑いが好きというのは変わらず、いわゆる賞レースの決勝は毎回録画して自分なりに採点して順位をつけております。今回はM-1グランプリ2024決勝の採点をしてみました。
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Mー1グランプリ2024決勝の採点をしてみた
M-1グランプリ2024決勝は前年から審査員の人数が変更になりました。
- 「ファーストラウンド」は9人の審査員が1人100点の持ち点で審査。
- 1組のネタが終わるごとに「笑神籤(えみくじ)」というクジで、次にネタを披露する芸人が決まる。
- 昼間に行われた敗者復活戦によって、1組が決勝に勝ち上がる。
- ファーストラウンド10組のネタ終了後、得点上位3組が「最終決戦」に進出。
- 最終決戦はファーストラウンド上位の組からネタ順を選択。3組のネタ披露後、審査員は3組のうち1組に投票。最も票数を集めた芸人が優勝となる。
という方式です。
項目に分けて勝手に採点
今回私は項目に分けて勝手に採点し、その合計点を芸人ごとに出してみました(以下敬称略)。
- 合計100点満点で採点。
- 【構成】:25点満点(決勝に出てくる最低ラインを20点)。
- 【表現力・熱量】:25点満点(決勝に出てくる最低ラインを20点)。
- 【オリジナリティー】:20点満点(同じく決勝最低ラインを15点)。
- 【客受け】:20点満点(同じく決勝最低ラインを15点)。
- 【エクストラポイント】:10点満点で基準点は5、クスッとくるポイントがあれば加点、あとは出番順や個人的つぼなどで加点。
ファーストラウンド
①令和ロマン
内容:子どもの名前
構成 | 24/25 |
表現力・熱量 | 25/25 |
オリジナリティー | 19/20 |
客受け | 19/20 |
エクストラポイント | 9/10 |
合計 | 96/100 |
登場からの圧倒的王者感で1ポイント、「終わらせよう」の掴みで1ポイント、「渡辺」で拍手笑いが起きて1ポイント、「保護者会で漫才したいだろ」で1ポイント、エクストラポイントは9になりました。
寸評
- 笑神籤の結果、まさかの前年王者が2年連続トップバッターになるという奇跡が起きて、会場は大盛り上がり。
- トップのハンデを感じさせない貫禄と存在感、そして場を制圧する胆力。
- 「名字」をテーマにしゃべくり漫才でありながら言葉遊びに終始することなく、教室という場面・状況を観客にきっちり共有させる話術と表現力。
- 狙ったところでしっかり笑いを取り、かつ拍手笑いも複数起きてほぼ完璧な仕上がり。
- 王者の貫禄を感じさせる堂々たる振る舞い、かつ漫才を楽しみながらやっている感じが伝わってきて、余裕すら感じる出来で大いに盛り上がりました。
審査員の点数
大吉 | 塙 | 哲夫 | 若林 | 石田 | 山内 | 柴田 | ともこ | 礼二 | 合計 |
96 | 93 | 90 | 94 | 96 | 96 | 95 | 97 | 93 | 850 |
②ヤーレンズ
内容:おにぎり屋
構成 | 24/25 |
表現力・熱量 | 24/25 |
オリジナリティー | 18/20 |
客受け | 18/20 |
エクストラポイント | 8/10 |
合計 | 92/100 |
「終わったみたいなんで始めます」と令和ロマンの流れをくんだ掴みで1ポイント、「握り海峡飯景色」で拍手笑いが起きて1ポイント、「坂本冬美です、それ」で2人で落ち込む新しい仕掛けで1ポイントで、エクストラポイントは8になりました。
寸評
- ボケ数も多く、安定してずっと笑いが起きていました。
- 2人で落ち込むシーンなど、去年になかった新たな合わせ技なども増えて、工夫してる印象。
- 前半の滑り出しはよかったが、少し単調というか4分間のリズムとテンポ感が一定で、断続的に笑いは起きているが爆発する箇所があまりなかった。
- 後半にもっとバカバカしいボケの連発だったりがあって、うねるような盛り上がりがあると点数が上がったのでは。
- もちろんトータルとしては、しっかり受けていたが、昨年の爆発力を知ってるが故に少し物足りなさを感じてしまった。
審査員の点数
大吉 | 塙 | 哲夫 | 若林 | 石田 | 山内 | 柴田 | ともこ | 礼二 | 合計 |
92 | 92 | 91 | 92 | 92 | 91 | 91 | 94 | 90 | 825 |
③真空ジェシカ
内容:商店街のロケ
構成 | 23/25 |
表現力・熱量 | 24/25 |
オリジナリティー | 19/20 |
客受け | 19/20 |
エクストラポイント | 9/10 |
合計 | 94/100 |
「終わらせましょう」の被せでしっかり笑いが起きて1ポイント、「トングを使わない2人が」で拍手笑いが起きて1ポイント、「憲法撤廃」で1ポイント、「今年の都知事選みたいだ」で大きな拍手笑いがきて1ポイントで、エクストラポイントは9に。
寸評
- 前半の「偏った政党のポスターが多い」がフリになって、後半に畳み掛けて笑いが増幅するところは流石。
- だが、逆に言うとその部分など商店街のロケから脱線したボケが多い印象は否めない。ロケでありながら店の紹介する箇所が少ないように感じる。私の採点では、その分を構成の点数で減点しました。
- とはいえ、大喜利的ボケは一発一発どれもパンチ力があり、しっかり受けていた。
- 自分たちのやりたいことを、M-1という大会に向けてチューニングしてきていたのはお見事。4年連続決勝進出という実力をまざまざと見せつけた。
審査員の点数
大吉 | 塙 | 哲夫 | 若林 | 石田 | 山内 | 柴田 | ともこ | 礼二 | 合計 |
97 | 94 | 90 | 93 | 95 | 97 | 94 | 95 | 94 | 849 |
④マユリカ(敗者復活)
内容:高校のときの同窓会
構成 | 23/25 |
表現力・熱量 | 23/25 |
オリジナリティー | 18/20 |
客受け | 18/20 |
エクストラポイント | 6/10 |
合計 | 88/100 |
「歌詞上海ハニーやねんけど」で拍手笑いが起き1ポイント、、エクストラポイントは6になりました。
寸評
- 敗者復活から上がってきたマユリカだが、その勢いを活かせたとは言い難い出来。よく言えば冷静で落ち着いた、悪く言うと熱量をあまり感じず、淡々と4分間が終わった印象。
- 同窓会というシチュエーションだが、2人のやり取りに終始していてどんな会場で他にどんな同窓生がいるのかなどが見えづらい。校歌の話題などウケてはいるが、それまでの流れから逸脱した唐突に感じるボケが見受けられた。
- ここまでの3組と比較すると、やはり爆発力に欠けており全体的に点数が低くなった。特に直前の真空ジェシカとネタの構造が似ているだけに、精度の違いを感じたしまった。
- 得点が出た後の「大急ぎで負けにきたんですが」という一言など、平場のやり取りは素晴らしかった。2人のキャラも確立しているので、来年はもっと強烈な個性とオリジナリティーを詰め込んだネタを見てみたい。
審査員の点数
大吉 | 塙 | 哲夫 | 若林 | 石田 | 山内 | 柴田 | ともこ | 礼二 | 合計 |
93 | 91 | 88 | 91 | 91 | 90 | 89 | 96 | 91 | 820 |
⑤ダイタク
内容:ヒーロインタビューを受けてみたい
構成 | 24/25 |
表現力・熱量 | 24/25 |
オリジナリティー | 18/20 |
客受け | 19/20 |
エクストラポイント | 6/10 |
合計 | 91/100 |
「伝家の宝刀じゃねえ」の掴みから何箇所か拍手笑いが起きて1ポイント、エクストラポイントは6。
寸評
- ラストイヤーのダイタク渾身のネタは掴みからオチまでテンポよく、かつ澱みなく進み、役割の入れ替わりもスムーズで鮮やか。双子の特性を活かして、随所できっちり笑いを取っていて小気味よいネタでした。
- ただ、澱みがなさすぎて個人的には少し冷静に俯瞰でネタを見る状態になってしまった。2人の世界に巻き込まれる感じがあまりしなかった。
- 厳しい言い方をすると想定内でストーリーとボケが進んでいって、裏切りや驚きが少なかった。それが個人的にはエクストラポイントの少なさに影響しています。もうすこし緩急やリズムを崩すところがほしかった。
- 個人的願望になるが、THE SECONDの6分という尺の中で、もっと余裕を持って脱線したり遊びが見える漫才を見てみたいと思った。
審査員の点数
大吉 | 塙 | 哲夫 | 若林 | 石田 | 山内 | 柴田 | ともこ | 礼二 | 合計 |
90 | 93 | 89 | 92 | 90 | 92 | 88 | 94 | 92 | 820 |
⑥ジョックロック
内容:医療ドラマ
構成 | 23/25 |
表現力・熱量 | 23/25 |
オリジナリティー | 19/20 |
客受け | 18/20 |
エクストラポイント | 6/10 |
合計 | 89/100 |
「やっぱりちょっとカード作るの怖いな」の1発目のボケから拍手笑いが起きて、1ポイント、エクストラポイントは6。
寸評
- 初登場で1発目のボケから自分たちのスタイルを提示して、それを観客にスムーズに伝えることができていた。
- 1つのボケに、2回つっこんでその2回目のツッコミでも笑いをしっかり取っていて、大ハズしする箇所もなかった。
- 審査員からも指摘があったが、ツッコミで全て笑いが起きていて、ボケがある種フリになってしまっているのが勿体無い。ボケでも笑いが取れるとツッコミでそれが増幅されて、より大きなうねりになっていたのでは。
- 冒頭で「医療ドラマが好き」と言ってるが、演じているのは病院での出来事。もっと「ドラマ」の部分を演じるシーン、ドラマという設定を利用したボケがあってもよかったかも。
- 結成2年半とまだまだ成長の余地があるので将来が楽しみ。このままのスタイルでもっとエッジが加わり進化を遂げるのか、違うエッセンスを加えたり変化していくのか、今後に期待。
審査員の点数
大吉 | 塙 | 哲夫 | 若林 | 石田 | 山内 | 柴田 | ともこ | 礼二 | 合計 |
89 | 91 | 91 | 90 | 89 | 93 | 88 | 95 | 93 | 819 |
⑦バッテリィズ
内容:偉人の名言
構成 | 23/25 |
表現力・熱量 | 24/25 |
オリジナリティー | 19/20 |
客受け | 19/20 |
エクストラポイント | 10/10 |
合計 | 95/100 |
「ライト兄弟」→「なんやその守備下手そうな兄弟は」で1ポイント、「全部聞き取れたのに」で1ポイント、「亡くなってるからムリや」→「そらすまん」→「謝れんのはエライ」の流れで1ポイント、「ガリレオガリレイ」→「細そうすぎるやろ」で1ポイント、「トマトにどれだけ肥料をあげても、それはメロンにはならない」→「アホやないか」で大きな拍手笑いが起きて1ポイント、エクストラポイントは10になりました。
寸評
- 早めに「俺、毎日楽しいぞ」などのワードでボケのキャラを浸透させて、2人のアホ漫才の世界に導いていく流れは見事。
- 2人の掛け合いの間合い・テンポやテンションも心地よく、ボケのワードもアホでありながらもある種納得できる要素もあって、目新しさがあった。
- 十分ウケていたが、一つ一つの偉人の名言ごとのパートに分かれていて、「細そうすぎる」の天丼はあったが、冷静にネタを振り返ると少しパートのぶつ切り感があった。だが、それを感じさせない話題展開の上手さだったり、テクニックも素晴らしかった。
- ただ、1回見るとやり方というかパターンはある程度わかってしまうネタの作りなので、2回目以降それをどう上回ってくるか裏切ってくるかという期待、いわゆるハードルはどうしても高くなってしまうかも。
審査員の点数
大吉 | 塙 | 哲夫 | 若林 | 石田 | 山内 | 柴田 | ともこ | 礼二 | 合計 |
95 | 93 | 95 | 95 | 97 | 96 | 96 | 97 | 97 | 861 |
⑧ママタルト
内容:2人で銭湯に行ってみよう
構成 | 23/25 |
表現力・熱量 | 23/25 |
オリジナリティー | 18/20 |
客受け | 18/20 |
エクストラポイント | 5/10 |
合計 | 87/100 |
個人的にハマるところはなく、エクストラポイントは5ポイントに。
寸評
- ちょっとツッコミの檜原の声のトーン・ボリュームとテンションが、大鶴肥満のボケと観客の空気に見合ってなくて空回ってしまったかなと。テレビ局のスタジオではなく、もっと大きな会場や野外でやってるネタのような印象。
- 具体的には、ボケを粒立てたツッコミが粒立てすぎていて、直前の「バッテリィズ」のナチュラルな掛け合いとの差を感じてしまった。
- バッテリィズのアホ漫才の直後で観客がリセットされておらず、観客にちょっと考えさせるボケがあまりハマってなかった。
- 銭湯という不特定多数のお客さんがいるシチュエーションをもっと活かしてほしいと個人的には思った。ちょっと2人だけでのやり取りが続く印象で(子どもが流されるシーンなどはあったが)他のお客さんとの絡みなどがあってもいいのかなと感じた。
審査員の点数
大吉 | 塙 | 哲夫 | 若林 | 石田 | 山内 | 柴田 | ともこ | 礼二 | 合計 |
88 | 89 | 89 | 89 | 90 | 93 | 89 | 92 | 93 | 812 |
⑨エバース
内容:初恋の子との再会
構成 | 24/25 |
表現力・熱量 | 24/25 |
オリジナリティー | 18/20 |
客受け | 18/20 |
エクストラポイント | 9/10 |
合計 | 93/100 |
「流石に末締めだろ」で拍手笑いが起き1ポイント、「土地開発か」のワードの意外性と言い方の絶妙さに1ポイント、、「3階のオムライス屋さんがポムの木」→「ちょっとあるな」で1ポイント、「好きな男を待ってるときの女くらい顔見たらわかるわ」で拍手笑いが起きて1ポイントで、エクストラポイントは計9ポイント。
寸評
- 話題の展開の仕方、「〜〜だったらどうする?」「じゃあ、××しろよ」「そうしたら○○で〜〜」という流れが非常にスムーズで、2人のやり取りに惹き込まれた。
- ボケの佐々木が主役の話だが、途中でツッコミの町田がその話に組み込まれていく流れなども秀逸で、構成力の高さを感じるネタ。
- しゃべくり漫才でコントインしない中で、状況を観客にイメージさせ画を共有できるように持っていく、表現力や言葉のチョイスなども素晴らしい。
- 冒頭から後半まで観客の想像を裏切っていく展開は見事だが、強いていうなら最初の掴みまで時間がかかったのと、最後の30秒くらいで爆発する箇所がなかったのは少しだけ残念だった。
- 以前から「ネタが面白い」と話題のエバースが、今回初出場できっちり爪痕を残した。来年以降も非常に期待が持てるコンビで、また違うネタを見てみたい。
審査員の点数
大吉 | 塙 | 哲夫 | 若林 | 石田 | 山内 | 柴田 | ともこ | 礼二 | 合計 |
94 | 94 | 93 | 94 | 96 | 94 | 93 | 94 | 96 | 848 |
⑩トム・ブラウン
内容:ホストクラブに通う女の子の肝臓を守りたい
構成 | 23/25 |
表現力・熱量 | 23/25 |
オリジナリティー | 20/20 |
客受け | 17/20 |
エクストラポイント | 7/10 |
合計 | 90/100 |
設定が意味不明な中、2人のパワーで押し切るその胆力とマンパワーに1ポイント、最後息切れしながら独自の世界を貫き続ける姿勢に1ポイントで、エキストラポイントは合計7になりました。
寸評
- ある種解説不能な、トム・ブラウンにしかできないオリジナリティーしかない唯一無二の漫才。
- 形としては昨年2023年の敗者復活で強烈なインパクトを残したネタに近い。そして、去年のネタの方が内容が伝わりやすく観客にもハマっていたので、去年決勝に上げていれば…というたらればを感じてしまった。
- 「ホストクラブに通う女の子の肝臓を守りたい」と「場が白けない一気コールの断り方」は、つながってるようでつながってない別の話だという捉え方もできる。
- 要するに最初に切り出した話題とメインテーマがズレてるのだが、そんなことは忘れてしまう圧倒的狂気とパワーだった。ついてこれない観客がいるのも仕方ないネタだが、ラストイヤーに迷いなくやり切る姿はカッコよかった。
審査員の点数
大吉 | 塙 | 哲夫 | 若林 | 石田 | 山内 | 柴田 | ともこ | 礼二 | 合計 |
95 | 95 | 92 | 93 | 88 | 90 | 87 | 94 | 89 | 823 |
ファーストラウンドの結果
私の採点の上位3組は
- 1位:令和ロマン96点
- 2位:バッテリィズ95点
- 3位:真空ジェシカ94点
でした。審査の結果、最終決戦に進出したのは
- 1位:バッテリィズ861点
- 2位:令和ロマン850点
- 3位:真空ジェシ849点
の3組となりました。審査内容については次のブログで分析しますが、3位「真空ジェシカ」と4位「エバース」はわずか1点差という僅差でした。
最終決戦
最終決戦はファーストラウンド上位の組からネタ順を選択し、「真空ジェシカ」→「令和ロマン」→「バッテリィズ」の順に決まりました。
①真空ジェシカ
内容:長渕剛のライブと間違えて隣の会場のピアノがデカすぎるアンジェラ・アキのコンサートに行った
構成 | 24/25 |
表現力・熱量 | 24/25 |
オリジナリティー | 19/20 |
客受け | 19/20 |
エクストラポイント | 9/10 |
合計 | 95/100 |
「智春さ〜ん」→「ミキティ側の意見ですね」の掴みがしっかりハマって1ポイント、「最後神様みたいになってたよ」→「それは信じる神によるけどね」で1ポイント、川北がアンジェラ・アキ役になりたっぷりセリフがないシーンが続いてからの「静かすぎて隣の長渕がうっすら聞こえてきた」で大きな拍手笑いがあり1ポイント、「(弾いてないのに勝手に音が流れて)ここは誰が弾いてるの」→「誰手紙明美」→「タメ口で手紙書くのやめな」のコンボで1ポイント、エクストラポイントは9になりました。
寸評
- ピアノがデカすぎるアンジェラアキで、隣で長渕のライブをやっているという意味不明の設定を演じ切って笑いを取る力は流石。
- 個人的には大好きなネタですが、若干ついていけてない観客もいたように感じた。観る人を選ぶネタであった点は否定できない。
- セリフがなく沈黙が続くシーンを恐れずに入れて、その後に爆発的な笑いを巻きこす胆力と場を操る力はお見事。
- だが、優勝するにはついていけない観客がいないような、全員を巻き込むネタじゃないといけないのかなということを改めて認識しました。
- 毎年進化して違う一面を見せてくれる真空ジェシカ。ハードルは年々上がり続けていますが、来年にもやはり期待したいです。
②令和ロマン
内容:戦国時代にタイムスリップ
構成 | 25/25 |
表現力 | 25/25 |
オリジナリティー | 19/20 |
客受け | 19/20 |
エクストラポイント | 10/10 |
合計 | 98/100 |
「面倒じゃ切れ」→「終わったんだけど」で1ポイント、刀で切られてもなんともないケムリの「なんか僕硬いみたいです」で1ポイント、「どうしよう、俺が出てくる童歌がある」で1ポイント、ケムリが半ば無理やり「熊猿です」と言わされるところで拍手笑いが起きて1ポイント、「なんか2.5次元みたいな奴出てきたんだけど」で1ポイント、ケムリが熊猿になって敵を倒す→くるまが歌うオチで大爆笑が起きた状態でネタを終えるシメも完璧で1ポイント、エキストラポイントは10になりました。
寸評
- 壮大な世界観、そして複数人のキャラクターが入り乱れる難しい状況を演じ切って観客に場面を明確にイメージさせるくるまの表現力・演技力と、その世界に入り切らずに翻弄されながらツッコむ松井ケムリという対比が見事。
- そんなケムリがクライマックスで熊猿という役に入ってマックスの大爆笑を巻き起こし、そこにくるまが歌うボケを重ねて大オチで終わるという流れは完璧で、圧巻の一言。
- 構成・展開と演技力、そして観客を巻き込む力といい文句のつけようがないネタ。
- 連覇が掛かるという上がりきったハードルをいとも簡単に超えてくる令和ロマンには恐れ入りました。「あっぱれ」「お見事」としか言いようがない出来て、ただただ脱帽です。
③バッテリィズ
内容:世界遺産を教えてほしい
構成 | 24/25 |
表現力 | 24/25 |
オリジナリティー | 19/20 |
客受け | 19/20 |
エクストラポイント | 7/10 |
合計 | 93 |
「(サグラダファミリアについて)140年工事しててまだ完成してないくらいデカい建物」→「なんで俺スペインまで行って、工事現場行かなあかんねん」で1ポイント、大阪にある世界遺産の公園→横にでっかい鍵穴→「お墓やわ」→「もう誰も死なんといて」の流れで1ポイント、エキストラポイントは7になりました。
寸評
- 1本目はややパートごとのぶつ切り感があったが、2本目はそれを感じさせない前後のつながりがあるネタだった。
- 構成も練られていて、しっかりウケも取っていた。しかし、いかんせん直前の令和ロマンの圧倒的なパフォーマンスを見た後だと、少しパワーダウンしたように感じてしまった。ネタ順が違ったら(例えばバッテリィズがトップなら)また見え方が変わっていた可能性がある。
- パターンというか2人の漫才の形に慣れてしまった感があり、1本目ほどの新鮮さはどうしても少し薄れてしまった。
- とはいえ、どのボケも面白くて2人の掛け合いのリズム・テンポ感のよさは変わらず秀逸。これを機にバッテリィズを世に知らしめることが出来ていい機会になったのでは。
最終決戦の結果
私の採点結果は、
- 1位:令和ロマン98点、
- 2位:真空ジェシカ95点
- 3位:バッテリィズ93点
でしたが、審査員の投票結果は
大吉 | 塙 | 哲夫 | 若林 | 石田 | 山内 | 柴田 | ともこ | 礼二 |
令和ロマン | 真空ジェシカ | バッテリィズ | バッテリィズ | 令和ロマン | 令和ロマン | 令和ロマン | 令和ロマン | バッテリィズ |
- 1位:令和ロマン5票
- 2位:バッテリィズ3票
- 3位:真空ジェシカ1票
令和ロマンが優勝。前人未到の2連覇を果たして20代目の王者に輝きました。
全組のネタを見ての総評
全10組のネタを見た上での総評、改めて感じたことを箇条書きで10個挙げていきます。
- 2023年は若干盛り上がりに欠けた印象でしたが、2024年は明確にスベったコンビもなく全組ウケていて、いい大会になったなぁと感じました。
- 観客も変なところで笑わず、ここぞというボケ(ツッコミ)でちゃんと笑っていて、賞レースの観客としては理想的だといえる。
- 「令和ロマン」が2年連続トップバッターで、2組目が昨年2位の「ヤーレンズ」、そして決勝常連の「真空ジェシカ」という笑神籤が引き起こた奇跡も、また大会を盛り上げる要因となったかと。
- 決勝に連続出場したのが敗者復活の「マユリカ」を含む4組、返り咲きが「トムブラウン」、初決勝が5組というバランスもちょうどよかった。
- 今回の決勝全体の傾向でいうと、状況・シチュエーションを端的な言葉で明確に観客に伝える表現力やワードチョイスに長けた組が結果を残した印象。
- 強い言葉の羅列や言葉遊び、いわゆる大喜利漫才だけでは勝ちきれない大会だと改めて実感しました。
- 「あるある」という共感だけでなく、観客を自分たちの世界に巻き込む力が求められているのは明らか。
- 表情や声・動きなどのフィジカルな部分に間合い・テンションや立ち居振る舞いなどの台本以外の部分の重要さが改めて浮き彫りになったと個人的には感じました。
- そんな大会を制したのは、大会前から連覇に向けて悪役ムーブをかましていた「令和ロマン」。
- 上げに上げたハードルを乗り越えて優勝するという大団円で、20回目の大会に相応しい結末だったと個人的には思います。
ということで、M-1グランプリ2024を勝手に採点をして寸評を述べてみました。審査員の点数に関しての分析を、次回書きたいと思います。
2023年を除く過去のM-1も以下のように勝手に採点しております。