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元芸人の構成作家が【キングオブコント2022】決勝の審査を分析

私、ことりはかつて吉本興業で4年少々芸人やっておりました。今もお笑いが好きというのは変わらず。いわゆる賞レースの決勝は毎回録画して自分なりに採点し、審査員の審査(得点)の分析を行っております。今回はキングオブコント2022決勝の審査(得点)を分析してみたいと思います。
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キングオブコント2022決勝の審査方法

キングオブコント2022テレビでオンエアされる決勝の審査方法は
  • 5人の審査員が1人100点の持ち点で審査
  • 「ファーストステージ」は各組それぞれネタ終了後、5人の審査員が1人100点(合計:500点)で採点。全組終了後、その得点上位3組が「ファイナルステージ」に進出。
  • 「ファイナルステージ」で2本目のネタを披露し、再び5人の審査員が1人100点(合計:500点)で採点。「ファーストステージ」の得点と「ファイナルステージ」の得点を合計し、合計点の最も高い組が優勝。

という方式です。

審査員は山内健司、秋山竜次、小峠英二、飯塚悟志、松本人志の5名(以下敬称略)。メンバーは昨年と同じです。

ファーストステージの審査結果を振り返る

山内 秋山 小峠 飯塚 松本 合計
クロコップ ⑨90 ⑥93 ②94 ⑨90 ⑤93 ⑧460
ネルソンズ ①96 ⑨92 ⑥92 ③94 ⑦92 ④466
かが屋 ④94 ⑥93 ③93 ⑤92 ⑧91 ⑤463
いぬ ⑦91 ⑤94 ⑩90 ⑩89 ③95 ⑨459
ロングコートダディ ⑥92 ③95 ⑥92 ⑤92 ⑨90 ⑦461
や団 ⑤93 ③95 ③93 ①95 ④94 ②470
コットン ①96 ①96 ⑨91 ⑦91 ②96 ②470
ビスケットブラザーズ ③95 ①96 ①97 ①95 ①98 ①481
ニッポンの社長 ⑩89 ⑥93 ⑥92 ⑦91 ⑨90 ⑩455
最高の人間 ⑦91 ⑨92 ③93 ④93 ⑤93 ⑥462

審査結果

  • 審査員5人中4人が10組中1番高い点数(トップタイを含む)を付けた「ビスケットブラザーズ」が、2位に11点差を付け文句無しのトップでファイナルステージ進出。
  • 2位は2組。審査員1人が1番高い点数を付け、全員が93点以上を付けた「や団」。そして、審査員2人が1番高い点数を付けた「コットン」。
  • 1位の「ビスケットブラザーズ」と2位タイの2組が11点差で、2位タイと9位「いぬ」の差が11点。1位が離れ、2位から9位までが混戦となった。
  • 10位の「ニッポンの社長」の455点は9位と4点差。それでも2021年の10位453点よりも2点高く、2020年の10位440点に比べると15点高い。
  • 昨年同様全組の得点が高く、審査員の2位以下の点数が割れたことからハイレベルな接戦だったことを示している。

審査の傾向

山内 秋山 小峠 飯塚 松本
最高得点 96 96 97 95 98
最低得点 89 92 90 89 90
得点差(最高点-最低点) 7 4 7 6 8
  • 最高得点と最低得点の差は、最も差がある松本が8点、差がない秋山が4点。昨年は5人全員が最高得点と最低得点が8点差だったことを考えると、より今年は僅差の接戦だったことがわかる。
  • 例年松本は極力それぞれの組の点数をバラけさせ、同じ点数を付けないようにしていると思われるが、今年は93点を2組に90点を2組に付けた。松本以外の審査員も何組かに同じ点数を付けており、得点差を付けづらい難しい審査だったことがうかがえる。
  • 審査員間で最も得点の差が付いたのは「いぬ」で、最高点と最低点の差が6点。最も差が付かなかったのは「最高の人間」で、最高点と最低点の差が2点。
  • 「ネルソンズ」には山内が1番高い点数を付け、秋山が1番低い点数を付けた。「コットン」には山内と秋山が1番高い点数を付け、小峠が9位の点数となった。
  • 1位「ビスケットブラザーズ」と2位タイの「や団」、10位の「ニッポンの社長」以外の7組は、審査員5人のうち誰かは3位以上の点数で、別の審査員が8位以下の点数。今年は審査員によって評価が分かれる組が多かった。

山内健司の審査の特徴

  • 「ネルソンズ」の点数が高く、「や団」の点数がやや低め。この2組で「ネルソンズ」の方が3点高くなった理由を聞いてみたいです。
  • それ以外の点数の付け方は、審査員全体の傾向(=順位)に近い。

秋山竜次の審査の特徴

  • 全組に92点以上を付けて、最高得点と最低得点の差が4点と少ない。
  • 5人の中で唯一「最高の人間」が最低得点だった。

小峠英二の審査の特徴

  • 最高得点の「ビスケットブラザーズ」と2位の「クロコップ」の点数差が3点。これは5人の審査員で最も差が大きい。
  • 「クロコップ」が2位の点数と評価が高く、「コットン」が9位の点数なのが特徴。「クロコップ」が「コットン」よりも3点高かったのも小峠のみ。

飯塚悟志の審査の特徴

  • 他の3人が96点を付けた「コットン」に、小峠と共に91点を付けたのが特徴的。この点数になった理由を聞いてみたいです。
  • 「クロコップ」「いぬ」と、セリフの掛け合いが少ない組の点数が低めだった。

松本人志の審査の特徴

  • 飯塚と逆に「いぬ」に3位の点数を付け高評価。「ビスケットブラザーズ」に全審査員で最も高い点数98点を付けた。バカバカしさに振り切ったネタの点数が高かった模様。
  • 「ロングコートダディ」「ニッポンの社長」に最も低い点数を付けた。天丼のネタへの評価が低かったのだろうか。

ファイナルステージの審査結果を振り返る

山内 秋山 小峠 飯塚 松本 1st ファイナル 合計
や団 ②95 ②94 ②94 ②96 ②94 ③470 ②473 ③943
コットン ①96 ②95 ③95 ③95 ③93 ②470 ③474 ②944
ビスケットブラザーズ ②95 ①96 ①96 ①97 ①98 ①481 ①482  ①963

審査結果

  • ファイナルステージも審査員5人中4人が「ビスケットブラザーズ」に1番高い点数を付けました。
  • 「や団」と「コットン」は5人全員が1点差。「や団」の方を高く付けた審査員が2人、「コットン」の方を高く付けた審査員が3人で、「コットン」が1点差で2位という結果に
  • 今年はファイナルステージが3組全て93点以上で、ファイナルステージの方がファーストステージよりも全組点数が高かった。2本目のネタでも失速せずに高いレベルを保ったのが特徴。
  • 合計得点1位「ビスケットブラザーズ」2位「コットン」3位「や団」となり、「ビスケットブラザーズ」が史上最高点数で2位を19点引き離しての圧勝となりました。

審査(審査員)に関して

2022年の審査について

松本以外の審査員が一新された昨年2021年の大会の審査は、キャラクター・設定・展開・構成等についての寸評が的確で分かりやすいと好評でした。2022年も各審査員の寸評は、具体的で概ね視聴者的にも納得できるのものだったと思います。ただ、今年の審査に関しては一部でSNSで言及されていたのが「ビスケットブラザーズ」の点数が高すぎないか?という点です。「ビスケットブラザーズ」の点数は、ファーストステージ、ファイナルステージ共に審査員全員が95点以上。合計得点は去年の「空気階段」を上回る史上最高得点でした。

見受けられた否定的な意見

ビスケットブラザーズの高得点に異を唱える理由として見受けられた意見は

  • (特に1本目のネタに関して)見た目のインパクトが強烈なだけだ。
  • 「コットン」や「や団」の方が面白い。

などです。後者に関しては、個人の好みの問題となってくるので言及は避けます。前者に関しては、単なる出オチではなく、その後もきちんと展開がありボケ数も多いネタだったと審査員もコメントしています。5分間観客を飽きさせることなく、インパクトがあるキャラクターを上手く演じ切ったと言えるのではないでしょうか。

ビスケットブラザーズが高評価だった要因

ビスケットブラザーズが審査員に高評価だった要因を推測すると

  • 最初の掴みからオチまで満遍なく笑いを取っていた。
  • オリジナリティーのある設定とキャラクター。ボケ数も多く演技も巧みで、ネタとして完成度が高かった。
  • バカバカしさだけでなく、緻密さもあって構成も展開もよく練られていた。小道具やBGMの使い方も過不足なく効果的。
  • この2人にしか作れない世界観で、唯一無二の個性があった。

といったところではないかと思います。最大の要因は最初に挙げた会場でのウケ方=笑いの量になるでしょう。ファーストステージのネタについての飯塚のコメント「全ハマりでしたもんね。(高得点を)付けざるを得ない。」からも、ウケ方が爆発的だったのが想像できます。そのウケ方の他の組との差が、なかなか画面越しには伝わりづらいというのが、審査に関して一部の視聴者が疑問を持つ原因だと思われます。もちろん会場のウケが全てではないが、爆発的にウケると高得点に繋がるのは言うまでもないことでしょう。

大会全般に関して考察

昨年の大会後推察したネタの傾向

昨年の大会の決勝10組のネタを見て、個人的に「キングオブコント」の今後の傾向を以下のように挙げました。

  • ファイナルステージ進出3組に共通した、ドラマチックなストーリー性のあるコントが今後多くなっていきそうな予感。
  • 2018年以降ネタ時間が5分になったこともあり、ワンアイデアで押し切るようなネタよりも展開があるコントの方が有利になりつつあるのでは。より脚本力が問われる大会になっていきそう。
  • それに付随して音楽(BGMや効果音など)・照明・映像の重要性が増してくるのではないか。そうなってくると現状の赤白のセットが照明で染めづらいというのが懸案事項になってくるのですが・・・。
  • いわゆる“おかしな人”“変な人”“ヤバそうな人”にストレートに「気持ちわるっ!」「なんだこいつ〜」系のストレートなツッコミをする組は減ってくるのではないか。

今年のネタ

決勝に進出した10組のネタは、ほぼほぼ私が昨年予想した傾向のとおりだったのではないかと自負しております。さらにそれぞれのネタの中身と審査員のコメントから、私は以下のことを感じました。

  • 番組の一番最後の松本のコメント「コントは面白いのは当然として、演技力がないとこれからは上がっていけないという恐ろしい時代に入ってきた。」が示すように、演技力は備わってることが必須条件。
  • どこかで見たことのある設定や、既視感のある流れのネタは、例えそれを上手にアレンジしたものであっても、審査員によっては減点対象になりそう。
  • いわゆる天丼と呼ばれる同じことを繰り返すネタは、それぞれのボケがよほど破壊力がない限り高得点を取るのは難しそう。

上記を踏まえたうえで「や団」や「コットン」が勝ちきれずに、「ビスケットブラザーズ」が優勝した結果から、優勝するために今後必要になってきそうなことを個人的に想像してみます。

優勝するために必要な要素

ストーリー性・展開があるコントを、演技力があるコンビやトリオが演じる。これを満たす形として、よくできた台本を上手な役者が演じたらどうなるかというと、決勝進出まではありえても優勝は難しいのではないでしょうか。そう考えた上で、優勝するために必要だと個人的に思う要素を以下に列挙します。

  • どこかバカバカしさ、「アホだな〜」「くだらねえ〜」という要素も、笑いを取る上では重要だと思います。今大会では、ビスケットブラザーズのバカバカしさが群を抜いていて、爆発的な笑いをかっさらったと言えるでしょう。
  • 他で見たことのない設定、そのコンビ・トリオでしか演じることのない世界観という、唯一無二の個性も、優勝するには必要になってくると思います。その点でもビスケットブラザーズは、他の組を上回っていました。
  • 身も蓋もない言い方になりますが、普通の人がよくできたストーリーを演じても限界があると感じました。異なる個性を持った、個々の人として強さのあるコンビ・トリオが、その魅力を遺憾無く発揮したときには勝てないと、今大会で痛感しました。

今後ありうること(個人的妄想)

散々いろんなパターン・ネタがやり尽くされて、新しい形・やり方を見つけるのはなかなか難しそうではあります。それは承知の上で、今後ありうることを勝手に妄想すると・・・

  • 出ハケすることなく、ステージ上での脱ぎ着を行い、それをボケとして使う。ビスケットブラザーズが2本目のネタでで、女性の格好からその場で脱いで男性の格好になりましたが、もっとワンタッチで(マジックテープなどで)脱ぎ着ができるものを利用。振り向いてる間や目を離した一瞬で、脱いだり着たりできるとネタに活用できそうかなと思います。
  • 映像を上手く使ったネタというのも出てきそう。舞台上にいない人間やキャラクターを登場させる際、映像で見せるというやり方でリアリティーや逆にギャップを演出することで、笑いに繋げるやり方はありえるかと。

といったことが今後出てくるのではないかと、想像しています。

暗転について

「ニッポンの社長」のネタのときの審査員コメントで、暗転が多いことが指摘されていました。確かに暗転は便利ですが、以下のような特徴があります。

  • 状況をリセットしたり、過去に戻ったり、場面転換に都合がよい。
  • 衣装を変えたり、小道具を取りに行くために使える。
  • 明転した瞬間に格好が変わっていたり、ボケとして利用することができる。

活用の仕方は多岐に渡りますが、デメリットもあって

  • 観客が一旦冷静になるので、そういう意味でもリセットされてしまう。
  • 明転したときにどうなるんだろうという期待値が上がってしまう。

という点もあるので、使うとしても回数は最小限で、より効果的なタイミングが求められると思います。もしくは、しばらくの時間暗転していて(懐中電灯で照らしたり?)、暗いという状況を最大限に利用するという方法もなきにしもあらずかなと。

個人的な提言

これは、2020年からブログに書き記してますが(→キングオブコント2020の審査を分析)審査員を7人に増やすのはどうか?という提言をしております。今の審査員5人がメンツ的にもバランスが取れていて、おそらく何かしら事情がない限り、来年の大会は今年の形式を踏襲する形で行われると思われますが、

  • 例えば上位4〜5組が僅差の点数になった場合、1人が他の審査員より4〜5点高い(低い)点数を付けるとそれによって順位が入れ替わる原因となる。
  • そのため審査員一人の負担というか責任が非常に大きい。点数差をつけるのに慎重になってしまう可能性がある。

という理由から、2年連続同じ内容ですが改めて提言致します。

将来的には“審査員を7人に増やす”のはいかがでしょうか?

例えば「かもめんたる岩崎う大」「シソンヌじろう」

というのを、個人的な願望を込めて候補に挙げさせて頂きます。

もちろん大会関係者各位、毎年知恵を絞っているのは重々承知しておりますが、いち元ピン芸人として、いちお笑い好きとしてと、無責任な立場で勝手ながら書き綴ってみました。

 

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