キングオブコント2021決勝の審査方法
- 5人の審査員が1人100点の持ち点で審査。
- 「ファーストステージ」は各組それぞれネタ終了後、5人の審査員が1人100点(合計:500点)で採点。全組終了後、その得点上位3組が「ファイナルステージ」に進出。
- 「ファイナルステージ」で2本目のネタを披露し、再び5人の審査員が1人100点(合計:500点)で採点。「ファーストステージ」の得点と「ファイナルステージ」の得点を合計し、合計点の最も高い組が優勝。
という方式です。
ファーストステージの審査結果を振り返る
山内 | 秋山 | 小峠 | 飯塚 | 松本 | 合計 | |
蛙亭 | ⑤93 | ⑧90 | ⑤93 | ④93 | ⑥92 | ⑥461 |
ジェラードン | ⑨90 | ②96 | ⑦92 | ⑦91 | ⑤93 | ⑤462 |
男性ブランコ | ②96 | ②96 | ③94 | ②95 | ⑦91 | ③472 |
うるとらブギーズ | ⑨90 | ⑥93 | ⑤93 | ③94 | ⑧90 | ⑦460 |
ニッポンの社長 | ④95 | ⑤95 | ③94 | ⑧90 | ⑩89 | ④463 |
そいつどいつ | ⑥92 | ⑩89 | ⑧91 | ⑨89 | ②95 | ⑧456 |
ニューヨーク | ⑧91 | ⑧90 | ⑨90 | ⑥92 | ⑧90 | ⑩453 |
ザ・マミィ | ②96 | ②96 | ②95 | ④93 | ②95 | ②476 |
空気階段 | ①98 | ①97 | ①97 | ①97 | ①97 | ①486 |
マヂカルラブリー | ⑥92 | ⑦91 | ⑩89 | ⑨89 | ④94 | ⑨455 |
審査結果
- 審査員5人全員が10組中1位の点数(一番高い点数)を付けた「空気階段」が文句無しのトップでファイナルステージ進出。
- 続いて審査員4人が2番目に高い点数(2位タイ含む)を付けた「ザ・マミィ」が2位に。
- 3位は審査員3人が2番目に高い点数(2位タイ含む)を付けた「男性ブランコ」。
- 3位「男性ブランコ」と4位「ニッポンの社長」の差が9点と開き、ファイナルステージ進出3組と4位以下が審査によって明確に分かれた。
- 4位から10位までが10点以内に固まり、4位以下が混戦となった。また10位の点数が去年は440点で今年は453点と13点も高いのも特徴。全体的に得点が高かった。
審査の傾向
山内 | 秋山 | 小峠 | 飯塚 | 松本 | |
最高得点 | 98 | 97 | 97 | 97 | 97 |
最低得点 | 90 | 89 | 89 | 89 | 89 |
得点差(最高点-最低点) | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 |
- 奇しくも今回5人全員が最高得点と最低得点の差が8点。最高点は4人が97点で1人が98点。
- 例年通り松本は極力同じ点数を付けないようにしていると思われ、10組中8組に異なる得点を付けた。松本以外の審査員の各組への点数もバラけており、できるだけ異なる得点をつけるよう意識してるのではないかと推測される。
- 審査員間で一番得点の差が付いたのは「ジェラードン」「ニッポンの社長」「そいつどいつ」でいずれも最高点と最低点の差が6点。
- 結果的に5人が同じ点数の幅の中で審査する形となり、1人の審査員の得点が順位に(特にファイナスステージ進出に)大きく影響を及ぼすことなく、非常にバランスの取れた審査結果となりました。
山内健司の審査の特徴
- 「マヂカルラブリー」の点数がやや高め、「ジェラードン」の点数がやや低めとなっています。
秋山竜次の審査の特徴
- 山内とは違って「ジェラードン」の点数がやや高目でした。
小峠英二の審査の特徴
- 審査員トータルのファーストステージの順位とかなり近い審査結果となりました。
飯塚悟志の審査の特徴
- 「うるとらブギーズ」「ニューヨーク」の点数がやや高めに、「ニッポンの社長」の点数がやや低めとなっています。
松本人志の審査の特徴
- 全体での評価が8位の「そいつどいつ」に2位の点数、同じく全体評価9位の「マヂカルラブリー」に4位の点数を付け高評価。
- 逆に全体評価3位の「男性ブランコ」に7位の点数、全体評価4位「ニッポンの社長」に10位の点数を付けるなど、他の審査員と若干異なる審査結果に。
ファイナルステージの審査結果を振り返る
山内 | 秋山 | 小峠 | 飯塚 | 松本 | 1st | ファイナル | 合計 | |
男性ブランコ | ③93 | ②91 | ②93 | ②93 | ②93 | ③472 | ②463 | ②935 |
ザ・マミィ | ②94 | ②91 | ③91 | ③91 | ③92 | ②476 | ③459 | ②935 |
空気階段 | ①96 | ①93 | ①95 | ①95 | ①95 | ①486 | ①474 | ①960 |
審査結果
- ファイナルステージも審査員全員が「空気階段」に一番高い点数を付けました。
- 「男性ブランコ」に2番目の点数を付けた審査員が4人、「ザ・マミィ」に2番目の点数を付けた審査員が1人。
- 結果ファーストステージの4点差が無くなり、2位で2組が並ぶ結果に。
- 合計得点1位「空気階段」2位タイ「ザ・マミィ」「男性ブランコ」となり、「空気階段」が2位以下を引き離しての圧勝となりました。
審査(審査員)に関して
昨年SNSで見られた意見
昨年キングオブコント2020の審査に関してSNSで言及されていたのが“審査員のメンツはこれでいいの?”です。
- 審査員の人数が2015年以降固定の5人であるが人数はこれでいいのか?
- 「バナナマン」「さまぁ〜ず」がコンビ両方審査員なのはどうなのか?
- 審査員の入れ替えがあってもいいのでは?
といった意見が多く見られたのですが、今年2021年松本人志以外の審査員が全て入れ替わりました。
2021年の審査について
一新された今年の審査員の審査は概ね好評だったようです。その要因として考えられるのは
- 審査員のコメントがただの感想ではなくきちんと批評になっていた。短いコメント時間の中でキャラクター・設定・展開・構成等についての寸評が審査員各人から発せられ、それは審査される芸人にも視聴者にも納得できるものであった。
- 松本を除く審査員全員が賞レースの勝者かつ、テレビでコントを披露する機会のある現役のコント師である。さらに、出場メンバーと年齢や芸歴も近く、キャラクターやネタをよく知っており、説得力があった。
といったところですが、それ以上に今年は
- それぞれのネタのクオリティーが高く面白かった。明確に“スベった”コントがなかった。
- 中でもトップ3は抜けていたので、「このコンビの方が面白かった」「点数がおかしい」といった審査に対しての不満の声があまり上がらなかった。
のが一番の要因ではないかと個人的には思っています。
今年SNSで見られた意見
今年の大会に関してSNSで言及されていたのが“トップバッターは不利ではないか?”です。これはおそらく今年のトップ「蛙亭」の時の審査員の以下のコメント
- 飯塚「トップバッターじゃなければ、もっと多分高くつけてるんですけど。ちょっと押さえちゃいましたね。」
- 秋山「様子は見ました。」
- 松本「もう少し高くてもいいかなと思うんですけど、あんまりトップバッターで高くつけすぎちゃうと上が詰まってくる可能性があるんで。」
というのを受けて、トップバッター不利説が出てきてるのだと推測されます。しかし、私としては「トップバッターは以降の審査の基準となる。その基準が高すぎると後の組で点数差を付けづらくなるからよろしくない」という考えです。
例えば1組目Aに97点を付けた場合、以降のBというコンビがAを上回る出来だった時に点数をつけようとすると98点になります。となると次に、Cというコンビが更に上回った場合99点か100点を付けるしかありません。また、Cに100点を付けると、Cを更に上回るコンビDが出てきた場合、Dには100点より上は付けられません。
そういった事情も踏まえて「昨年なら95点を付けてもいい出来だがトップバッターなので93点にした。よって以降の組は、トップバッターを基準に昨年と同じレベルの場合2点低い点数をつける。」という意味合いだと解釈しています。
実際トップバッターは不利なのか?
ただ、これはあくまで私の解釈に過ぎず、実際トップバターはやはり不利なのではないか?低い点数になってるんじゃないか?とお考えの方もいると思います。そこで、「キングオブコント」が現在の形(決勝は10組で審査員が5人。ファーストステージ上位の組がファイナルステージに進出)になった“2015年以降の出番ごとのファーストステージの平均順位を出してみました。”
上の表を見てもらえるとわかるように、トップバッターが特別不利という結果にはなりませんでした。数字上有利なのは6番8番で6番は一昨年まで5年連続ファイナルステージ進出。不利なのはここ2年連続最下位の7番ということになります。
今大会は前半戦で強烈なキャラクター・個性的なコントが続き、それがみんな受けたが故に、お客さんが刺激に慣れてしまったように感じました。中盤からオーソドックスなコントや、これまでの大会なら高得点を取ったであろうコントをしても”跳ねない”という状況に陥ったように思います。そういう意味では結果的に、「そいつどいつ」「ニューヨーク」が出番的にはやや不利になったと言えるかもしれません。
大会全般に関して考察
ネタの傾向
今大会の決勝10組のネタを見て、個人的に感じた「キングオブコント」の傾向を列挙します。
- ファイナルステージ進出3組に共通した、ドラマチックなストーリー性のあるコントが今後多くなっていきそうな予感。
- 2018年以降ネタ時間が5分になったこともあり、ワンアイデアで押し切るようなネタよりも展開があるコントの方が有利になりつつあるのでは。より脚本力が問われる大会になっていきそう。
- それに付随して音楽(BGMや効果音など)・照明・映像の重要性が増してくるのではないか。そうなってくると、現状の赤白のセットが照明で染めづらいというのが、懸案事項になってくるのですが・・・。
- いわゆる“おかしな人”“変な人”“ヤバそうな人”が現れて、「気持ちわるっ!」「なんだこいつ〜」系のストレートなツッコミをする組は、減ってくるのではないか。
「空気階段」の1本目では、下ネタ=SM(裸で縛られた男)があくまでフリになっていて、その状況で警官・消防士としてかっこよく職務を全うすることがボケになっていました。またザ・マミィの1本目の“おじさんと道を尋ねる青年”では、青年はおじさんに何の偏見も持たず道を尋ねて財布を預けることがボケになり、おじさんが「偏見を持て」とツッコむ形でした。“多様性”をどううまく扱うかが命題となってくるかもしれません。
ただし、その傾向の逆をいく組が高得点を取ることもあるのが賞レースです。5分をワンアイデア(+@?)で突き抜けるネタや、おいでやす小田ばりのストレートなツッコミがバシバシ入るネタが上位にくる可能性も、もちろん否定できません。
観覧客について
こちらもSNSで少し話題になってましたが、審査員の後ろでチラチラ映る観覧客が若い女性ばかりであることがいいのか?という問題があります。今大会でいうと、芸人が言う“客が軽い”=よく笑う状況だったので、芸人的には基本やりやすかったとは思います。ただ、男性向けのネタや、年齢層高い人が共感しやすいボケが、伝わらなかったりするという弊害もあるのは否めません。個人的には、老若男女いて比率は若い女性が多めというのが、理想的ではないかと思います。
個人的な提言
昨年の記事では(→キングオブコント2020の審査を分析)審査員を7人に増やすのはどうか?という提言をしておりました。結果5人という人数はそのままで、“ポーカーの4枚替え”のように松本人志を残して4人が入れ替わるという大改革が行われました。大会の盛り上がりを見るに、それは功を奏したように思います。おそらく来年の大会は今年の形式を踏襲する形で行われると思われますが、、、
- 今大会とは違って、どの組も僅差の点数になった場合、1人が他の審査員より4〜5点高い(低い)点数を付けるとそれによって順位が入れ替わる原因となる。
- そのため審査員一人の負担というか責任が非常に大きい。点数差をつけるのに慎重になってしまう可能性がある。
という理由から、勝手ながら改めて提言致します。
将来的には“審査員を7人に増やす”のはいかがでしょうか?
例えば「かもめんたる岩崎う大」「シソンヌじろう」
というのを勝手ながら個人的な願望を込めて候補に挙げさせて頂きます。
もちろん大会関係者各位、毎年知恵を絞っているのは重々承知しております。その上で、いち元ピン芸人として、いちお笑い好きとしてと、無責任な立場で勝手ながら書き綴ってみました。